りん

腐女子、うっかりゲイに告る。のりんのネタバレレビュー・内容・結末

4.4

このレビューはネタバレを含みます

やっっっと観終わった…重厚すぎて、特に4話以降は1話観るのにものすごく体力使った…相当きつかった…。

現時点の日本で性的志向に真正面から対峙するだけでも苦しいのに、そこにあらゆる視点が複雑に絡み合う。高校生ならではの全体主義、サイレントマジョリティの罪深さ、日本の男社会に根深く残るマッチョイズム、半世紀以上の歴史を持ち時には隠れながら密やかに守り続けた日本女性独自の"BL"文化。登場する人物の誰の視点に立っても、誰かを悪者/除け者/社会的弱者/蔑視の対象にしてしまう。
現実世界で空気抵抗をなかったことにするなんて出来ないのにそうしてしまう高校勉強のように、物事を分かりやすくすることで生まれる差別がある。
ただ同性愛者のジュンくんを可哀想な人として描いたり、ジュンくんが生きづらい世界を一面的に映したりするのではない。腐女子の三浦さんがジュンくんを好きになることで、彼だって加害者になるという視点を持ち出す。これにより視聴者は否応なしにあらゆる立場から物語を考えさせられる。
妻子持ちの彼氏から振られたジュンくんの失恋の痛みを、三浦さんはジュンくんに振られたことで感じているんだと思うと、とんでもなくきつい。
性別がはっきり分類できるわけではなくグラデーションであるのと同じように、人間はその立場や生き方により善悪で二分しようとするなんて出来ないんだと改めて感じた。分かってはいたことだけど、このドラマでより痛感した。

小野っちと亮平、それぞれジュンくんのこと好きだったんじゃないかな…。言葉少なで表情や動きでしか感じられない男子高校生の感情の揺れがリアルだった。

ラストの三浦さんの「神様は腐女子なんじゃない?」という言葉でジュンくんの脳内にこれまでの三浦さんがフラッシュバックするシーン、この物語の総括と言えるんじゃないか。腐女子を隠さない三浦さんと出会ったことで彼の世界は180°どころか5回転くらい変化した。いつも天真爛漫で、時には強引に、底抜けに明るく生きる(ように見える)彼女は、暗闇の中で膝を抱えて俯いていたジュンくんにとっては女神のような存在だったんだろうな。

ものすごく重い内容なのでもう見返せないかもしれないけど、金子大地くんの演技が好きだと気付けた思い出に残る作品になりました。
りん

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