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ある春の夜にのsoopenのレビュー・感想・評価

ある春の夜に(2019年製作のドラマ)
3.5
よくおごってくれる綺麗なお姉さん、の翌年に公開されたドラマ。監督演出も同じアンパンソク監督で、スタッフも一緒、キャストもソンイェジンに断られなければ、ほぼ同じばずだったようです。

内容的にも、属する社会の違いから、親の反対を受けて、恋が成就するのに難航する過程を描いたもので、かなり似ています。
しかし細かい点を見ていくと、まずチョンヘインの役が全然違う。よくおごってくれる〜のジュニは、ひたすらに可愛いワンコだけど、ゲームクリエイターとしての、自分の能力に自信を持っていて、グイグイと、どっちつかずのヒロインを自分のペースに巻き込んで翻弄する面も持つ、カッコカワイイタイプ。春の夜にのジホは、未婚の子持ちであるが故の、世間から見たデメリットに反抗することなく、淡々と粛々と世間を受け入れ、薬剤師という職を全うし、一目惚れした女性にも強く求めることはせず、待つことに徹する優しい男…

その分春の夜にのヒロイン、ハンジミン扮するイジョンインは、「竹を割ったような性格」と作中でも言われるような、正義感の持ち主で、思ったことは黙っていられない、猪突猛進タイプ、というのだから、これはもう役柄の逆転劇です。とはいえ、女性側が地位も名誉もある家柄で、男性側が弱い立場であるのは、同じ描かれ方だったので、監督が示唆したものが何かは分かりませんが、同じような設定でも、キャラクターの性格が違えば、子供という要素が入れば、物語はこんな展開にもなるよ、と言いたかってのかと思います。

よくおごってくれる〜が後半、ヒロインのオンマがモンスター化して、殆どホラーの様相を呈していたので、かなり苦手だったのですが、春の夜にのヒロインのオンマがまたこの女優さんでした!ただ今回はモンスター役をアボジに委託したのか、物分かりの良い、優しいオンマで馴染むのに時間がかかりました…。

春の夜に〜は、韓国では非常にリアルな恋愛の話なのかな。日本人からすると、未婚の子持ち男性(母親は赤子を恋人に押し付けて海外逃亡)が、何故そんなに結婚に絶望的にならなければならないのか、何故同じような母子家庭の母親としか、付き合ってはいけないのか、全く理解不能です。金銭的な理由ならば、しっかりした職業で、手に職なので問題はないのに、これではまるでカースト制度です。

一つ気になったのは、竹を割ったようなハッキリものを言う性格のヒロインが、何故ずっと性格の合わなかった元カレと、ズルズル4年も付き合っていたのか、父親の上司が恋人の父親だから、なんてことは彼女にとってそんなに大きなことだったのか?かなり違和感がありました。
でもどれも今の韓国の現実を描いているのかな、と思うと若者にとってなんと生き辛い世の中なんだろう。この作品の中で、唯一世間のしがらみに囚われず、自由な発想の持ち主達として描かれていた、ヒロインの妹とジホの友人が、とても好感が持てました。

よくおごってくれる、の音楽で作品を盛り上げた、レイチェルヤマガタが、また春の夜にでも使われていたので、その点でもとても似ている作品だと思います。
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