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大丈夫、愛だのsoopenのレビュー・感想・評価

大丈夫、愛だ(2014年製作のドラマ)
4.2
10年前の作品とは思えない程のリアルさが、ラブコメの装いながらも感じられました。確かにスカートやホットパンツが、下着が見えそうな短さだし、メイクも濃いめ。でもそれ以外は普遍的なテーマを扱っているせいと、巧みな会話回しの見事さに、グイグイ呑み込まれて、脚本の勝利を実感した作品です。

精神科医のチヘス(コンヒョジン)は、過去のトラウマから恋愛恐怖症を克服出来ず、いつも彼氏とは長続きしない。同じく精神科医の先輩、ドンミン(ソンドンイル)、その患者であるトゥレット症候群の若い男スグァン(イグァンス)、この3人でシェアハウスで楽しく暮らしていた。そこへ家の持ち主であるベストセラー作家のジェヨル(チョインソン)がやって来る。
彼は甘いマスクのプレイボーイ、いつも自信たっぷりで、去る者は追わず、女とも長続きしない。ヘスとジョエルは、水と油のように反発し合いながらも、徐々に言葉のキャッチボールが楽しくなり始め、惹かれていく。そして互いの心に触れる度に、傷付き牽制しながら、愛し合い癒しを求める存在となっていく…

なんて攻撃的で繊細な人間達!
医者ですら患者であり得る。
最初はアメドラのように、性にあけすけな会話に、誘っては突き放す大人の恋愛の話かと見ていたら、心を守る方法を持たない不器用な大人達の話だった。幼少期の親のDVや不倫が、家庭崩壊をもたらし、成功した大人になっても、傷付いた心は癒えていなかった…

チョインソンは、前半と後半でガラリと印象の変わる、多面性を見せる男の役が見事でした!アラブの王子というあだ名に相応しい、無精髭に節目がちになると睫毛の毛量の多さに驚く。セクシーで感情豊かで繊細で…
コンヒョジンは、初めてのタイプの役、と言いながらも気が強く、情の深い役を、彼女にしか出せない魅力で好演。ソンドンイルは、こんなに煩い精神科医は嫌なんだけど…と思うけど、つい頼ってしまう最後の砦だったし、イグァンスも若くて歳の離れた恋人(イソンギョン)との距離感に悩みながらも、病気と向き合っていく様子が深く描かれていました。
ドギョンスの役回りについてはネタバレになるので伏せますが、監督が思わぬ誤算、期待してなかったが、EXOは人気があるから…と起用したら大当たり。生まれつき演技の勘がある、天才かも知れない、と褒めまくっていたのも納得。後半にいくにつれ強烈に印象に残る演技を見せてくれました。
コンヒョジンが言うには、自分はその場でやり方を決めていくタイプ(アドリブも多い?)が、チョインソンは入念に準備してくる人なので、全く違う仕事のやり方で、インソンは最初戸惑っていたと。
思い出に残るのは沖縄ロケ。この直前にコンヒョジンは交通事故で腕を骨折し手術していたようで、術後4日での過酷なロケに、脚本も合わせてギブスをはめている理由を作っていましたが、怪我して痛い中での沖縄ロケラブシーンは、とても印象に残る素晴らしいものでした。

涙ぐむヘスを見て、ジェヨルもつられて涙を浮かべると、「どうしたの?」「君が泣くから。前に言っただろ。俺は受け身なタイプだと」と返した時のジェヨルの瞳の美しさと純粋さと、本心を彼女に明け渡したよるべなさを感じて、とてもジェヨルが愛しくなったシーンです。

他にも感慨深いシーンは沢山ありました。11話目のラジオトーク。
好きな映画は?と聞かれたヘスが『ビフォアミッドナイト』と間髪入れずに答えたので気になった映画。『恋人までの距離』、『ビフォアサンセット』とあるんですね。
そういえばチャンギヨン!全く気付かず、調べて見直してもチャンギヨンに見えなかった私の目は節穴でしょうか(笑)

『私たちのブルース』の脚本家とのことなので、引き続き見ようかと思います。未見の方には本当にお勧めしたい良作です。
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