moridon

チェルノブイリのmoridonのレビュー・感想・評価

チェルノブイリ(2019年製作のドラマ)
4.9
現場の意見に聞く耳を持たず事態を楽観視する政府。そう、真に恐ろしいのは放射能や疫病ではなく“責任の不在”と“隠蔽体質”なのだ。まさに今の日本の状況とリンクしていて震えた。めちゃくちゃ面白い。

毎話毎話違う視点からこのチェルノブイリという名の地獄が描かれていてとても濃い5時間だった。
本来ならロマンティックであるはずの恋人同士の抱擁シーンは我々の目にとてつもなく恐ろしく映る。“接触”に恐怖を感じるなんて、これも今の状況と重なる…

男二人の奇妙な友情、特にボリスの存在がこの地獄を生き抜く唯一の希望だったように思える。犬を銃殺せねばならないシーンは見るに耐えない情景だったが、ボリスの指を這う青虫の姿は命の美しさをもう一度我々に教えてくれた。

“Every lie we tell incurs a debt to the truth. Sooner or later that debt is paid.”

嘘の代償とは何か?真実への希望を捨て去り、“物語”で妥協する以外に道はないのか?第1話冒頭でのこの問いに対する答えがこの作品なのだとしたら、この作品もあくまで物語でしかないのだろうか…

真の死者数は未だに嘘で塗り固められたままである。しかし、助かった命があったということ、エンディングでその真実を知った時、少しだけ救われた。
moridon

moridon