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池中玄太80キロ パートⅠのaiaiのレビュー・感想・評価

池中玄太80キロ パートⅠ(1980年製作のドラマ)
5.0
哀悼 元祖リアクション俳優

俳優、西田敏行。
特に彼からみて目上の役者との絡みから出てくる瞬発力、そのリアクションが絶妙で、今にしておもえば、リアクション芸人の元祖だった。

「三男三女婿1匹」
70年代後半のTBSドラマで、大家族ホームコメディー。
古すぎて話題に上がらない作品であるが、間違いなく彼の演技のベースはこの作品から。
西田の原点だと思う。

キャストの座組は、森繁久弥、杉村春子といった当時の演劇界の重鎮らを筆頭に、おなじみの名優がずらりと並ぶ。
そんなか、ひときわピエロ役として、笑いをかっさらうような威勢のいい若手俳優がいた。
それが西田を初めてみたときだった。

御大、森繁久弥からいじられたり、逆にボケられたりした際の西田の、
「もう○○するんだもんなぁ〜、もう。。。」
と身をよじるような、悶々とした表情の演技が面白く、彼の出番があると家族みんなで笑ってみてた。

のちのハマちゃん スーさんの、大御所三国連太郎との掛け合いも、森繁久弥と絡んだこの作品での経験が活かされているとおもうしだい。

「池中玄太80キロ」
いわずもがなの出世作にして、名作。
「玄太ぁっ!!」と常に怒鳴り声を張り上げる長門裕之に、そのさらに上をいくような声と態度で食ってかかる西田、この二人の丁々発止のやりとりが毎回見物で面白かった。

そういう激しい"動"に対して、雪景色のなかにたたずむ鶴を、息を殺しながら夢中にシャッターを押すカメラマン池中玄太の"静"。

対照的な"動"と"静"にくわえ、玄太の3人の娘(亡くなった妻の連れ子なのでコミュニケーションに悩む日々)とのハートウォーミングな"心"。
作品として完成度が高く、俳優西田敏行の全部入りでもあった。

晩年は、名バイプレーヤー的な役どころで、いろんな作品で楽しませてもらったし、ライフワークとなった釣りバカも味があった。
けれども、もう一度、この池中玄太的な役をみたかったなぁ。
激しくて、面白くて、さみしがり屋で、真剣に悩んで、前へ前へと生きてゆく。
そして、何よりあったかい。
池中玄太=西田敏行

名優、西田敏行に合掌
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