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パレートの誤算 ~ケースワーカー殺人事件のkitoのレビュー・感想・評価

3.8
骨太な社会派ミステリーで見応えがあった。

全5話と少しだけ短めで観やすかった。顔見せ的なその初回、メインはもちろんセリフのあるバイプレイヤーまでなかなかの比率で見覚えのある役者ばかりだった。

それが不可避なのは分かるのだけど過去作のキャラ付けが思い浮かぶ程度に著名なキャスティングだと、どうしてもその印象に引っ張られてしまう。

本作では見知った顔がこれでもかと出てきて、木下ほのか、佐藤蛾次郎、宮下順子あたりには懐かしさから思わず、おお!となった。

日本弁護士連合会のサイトによれば、2011年の数字として生活保護利用者は全人口の1.6%で、それは先進諸外国に比べて4〜6倍低いという。

良くも悪くも "恥の文化" と言われ自助努力が強調され、その一方で無くならない不正受給などとかく制度運営が難しくずっと問題視されている生活保護制度、本作はそのアレコレがドラマとしてしっかり描かれていると思う。

殺されてしまうベテランケースワーカー、その上司、同僚、捜査にあたる刑事、生活保護受給者ーーみな、一癖も二癖もあるキャラ設定になっていて、物語の展開が読みにくく、最終話は意表をつかれた。

狙ってかどうかはわからないけれど、役者の持つキャラから抱きがちな先入観の裏を突かれた感がある。

主役の橋本愛は終始抑えた演技で何だかアンドロイドみたいでちょっと共感しにくいところもあったけれど、終わってみると彼女のクールなキャラを生かした好演に感じた。

彼女の演技もそうだけど全般にドラマとして違和感がなく、粗製濫造な地上波の "二時間サスペンス" とは大違いだった。
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