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日曜日は終わらないのmingoのレビュー・感想・評価

日曜日は終わらない(1999年製作のドラマ)
5.0
邦画で本作に匹敵する作品はあるのかレベルの超絶大傑作。人生ベスト。「オールナイトロング」シリーズ制作から酒鬼薔薇聖斗による少年犯罪・プラザ合意からバブル崩壊により日本に影が差し掛かり90sすべてを総括したような邦画の完成形がここにはあった。青山真治や黒沢清の関連を述べる人は多いだろうがそれらの流れはやはりロマンポルノやピンク映画の抒情性からの派生によるもので、上記の作家たちは「閉塞感」や「間」を自分たちの作家性として切り取り展開したが(小津成瀬をはじめとして田坂川島増村など→)結局は往年の日本映画から受け継がれるロマンポルノ神代辰巳・中村登・小沼勝らが裾野を広げた映像表現が90s邦画の源流になり、ピンク四天王などが90s映画の核として機能させていたと、今年のksの特集とアーカイブの本特集をみてきた考察・精算である。特に本作においての撮影は相米慎二的すぎて撮影は一体全体誰なんだ…栗田豊通?五十畑幸勇?

爆笑をさらう往年のピンク女優絵沢萠子をサラッと切り替えるのは岩松了らしいホンだが演出と撮影が特に舌を巻く。分かりやすいほどに風呂=胎内・牛乳=母乳を飲む水橋研二は何にも干渉されない永遠の少年。黄色いペンライトでイメクラ勤めの林由美香との接点を探りながら「やっぱり純白の白がいいの〜?」彼が選んだ答えは赤、最高。ラストカットで水の中を揺蕩う赤(パンティ)はつまり水橋研二そのもの。
また山口美也子から注がれる麦茶は「渇き」の象徴。麦茶はいくら飲んでも牛乳のようには成長しない、いくら飲んでも喉の渇きが潤うだけ、山口に与えられた役割の哀しみ(部屋の外を捉えたクレーン撮影)。青系の花柄ブリーフで扇風機にあたって呑気に見えるが自殺未遂をするほど追い詰められ屋上の暗闇で水色ヘアマントを被った渡辺哲に対して大盛りソーメンいんげんの和物をそっと箸に取り「家庭料理は良いなぁ」怪演させたら右に出るものはいない塚本晋也、2人の交わらない父親像が水橋の狂気を加速させる。そして90s後期の一発ギャグ屋大杉漣、ハンバーガー店店長光石研など往年の俳優見つける楽しみも。水橋研二と伊藤歩の義兄妹はまさしく90s後半-2000s前半の空気感を纏った主要俳優なだけあって瑞々しい演技は多幸感に満ちながらも懐かしさが込み上げた。リストラ社員役の高橋明の登場は心拍数上昇。

最後に特筆したいのは場所と心の動きの同期。川縁(多摩川?)団地バックに飛行機が右下から左上に通過し、たどり着いた高台、ここはどこ?ロケーションが侯孝賢ばりに素晴らしくて言葉にならない。「青い車」ならぬ「黄色いチャリ」に乗って建物を挟んで左へカメラを振ると全裸でチャリに乗る赤いパンティ林由美香、この激ヤバ撮影はなんなんだ。赤いパンティを入れていたガチャポンケースでキャッチボール、2人の共通言語はしりとり。マントヒヒ→ヒトゴロシ!でケースは建物の下へ落ち現実に引き戻される。魔法の時間は終わったが生きている限り時間に終わりはない、中華テーブルのように。

あまりにも映画に浸かった人生をおくってきたので友人知人に「そんなに好きなら映画を撮らないのか?」と聞かれることが多々あるが、撮るとするのならばまさに本作が理想の映画に近いのかもしれない。ポスターは作る
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