だいすま

岸辺のアルバムのだいすまのレビュー・感想・評価

岸辺のアルバム(1977年製作のドラマ)
5.0
昭和屈指の名作ドラマと昔から聞いていたものの観る機会が全く無かった中、なんと今回日本映画専門チャンネルにて再放送あり漸く鑑賞する事が出来た。

仕事が全てで家族を顧みない夫、専業主婦として静かに家を守る妻、そんな封建的な親に抵抗する優等生の姉、大学受験勉強に身が入らずブラブラしている弟の、ある意味どこにでもいそうな、外見的には「幸せそうな」家族の問題や闇を伶俐に描いている。

専業主婦へのイタズラ電話から物語は始まる。
はじめは気持ち悪いと相手にしなかったが、そのうち相手との会話が楽しみになり、最後は浮気にまで発展する。外国人から乱暴され中絶する姉、会社の為に人身売買に手を染める夫、家族の秘密を知ってしまい悶々と苦しむ弟と次第に崩れゆく一家族が、多摩川の岸辺にあるマイホームが水害によって消失するラストへと邂逅していく。

家族とは何か、をこうした中流家庭をモデルに問うた作品。
皆が笑っているアルバムを最後まで守ろうとした夫の気持ち。寂しかったと漸く最後に本心を伝える妻、やっと自分らしい生き方を見つけた姉弟と、それを見守って行こうと決意した両親。家族それぞれの立場で、それぞれの苦悩が丁寧に描かれていて、非常に深みのあるカット、心理描写、セリフによって何度も唸らされた。

家は流されたものの、屋根だけ残ったラストシーン。そこにこれからの家族の救いが示唆されていたように思う。

確かに紛れもない傑作だった。観れて良かった!
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