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呪怨:呪いの家のmegurosのレビュー・感想・評価

呪怨:呪いの家(2020年製作のドラマ)
4.3
英題はJU-ON: Origins. 佐伯伽倻子の怨念と呪いに触れた人々を描いた呪怨シリーズのその原点を描く。

舞台は1988年から90年代の後半までに置かれ、1988年の女子高生コンクリート詰め殺人事件、幼女誘拐殺人事件(宮崎勤を柄本時生)、1995年の阪神・淡路大震災、オウム真理教による地下鉄サリン事件など日本の犯罪史と負の歴史を時代背景として描きながら、東電OL殺人事件を思わせる丸山町の展開、宮崎勤が稲川淳二のファンだったような実話まで織り交ぜ、日本が本格的にヤバくなってくる時代の恐怖を抉り出している。

絶対に行ってはいけない家の話であり、その家に訪れたり住んだりした人たちは繰り返し悲劇に会うも、80年代後半は世の中はバブルに湧き、物件の買い手は過去に何があったかなんて気にしていない。そのバブルの中で、世の中の歪みはあらゆる所に現れ、この家の事件も膨大なニュースの中で忘れさられ、新聞の中に埋れていく。

黒沢清「クリーピー」ではご近所コミュニティが崩壊した住宅街という日常において、自分のすぐ隣に普通の顔をして存在している恐怖を描いた。本作はその場所に宿る恐怖をさらに一歩進め、この場所に関わったら最後、それは何処までも追いかけてくるという恐怖になっている。行ってはいけない場所というよりも、関わってはいけない人ということなのだろう。

ホラーは社会の不安を変換して見せる映画ジャンルだが、本作は日本社会を批評するJホラーの新たな傑作。もう昼間シーンでも怖かった。

不動産屋のおじさんに対して刑事が「あなたが無事でいられるのは何故だと思いますか?」と尋ねるシーンがあるが、非常に重要な問いだと思う。呑気にNetflixを観て楽しんでいる我々一人ひとりに投げかけられた問いだったようにも感じる。
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