めしいらず

スイッチのめしいらずのネタバレレビュー・内容・結末

スイッチ(2020年製作のドラマ)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

洒脱なコメディテイストとヒューマニズムが融合した如何にも坂本脚本らしい好編。腐れ縁の主人公松たか子と阿部サダヲの息の合った掛け合いは見飽きない愉しさ。岸井ゆきのと石橋静香の好演も光っている。不正義に直面すると己の中の正義スイッチが入り後先考えぬ暴挙へと駆り立てられる円の性格設定が面白くこのドラマの見どころとは言えさすがに極端過ぎるとも思う。また、ある理由で被害者になった男のあまりに悪し様な描き方には悪意がある気はする。昨今、様々な事件の痛ましい顛末に被害者や遺族に同情的に、加害者(まだ容疑者の段階で)許すまじに傾きがちな報道姿勢があるけれど、本作はそこに情動的に加勢するようなお話である。心情的にはとてもよく理解できるのだけれど、そこには極端な行為(例えば誹謗中傷や私刑)を誘発しかねない危険性を孕んでいる。類似の事件に対する視聴者の溜飲を下げる為のドラマに堕しかねない危惧がある。しかし現実が不公平なのも事実。だから権力によって歪められた正義を不正義なやり口で修正するしかなかった直の暗躍が必要だったのかも知れない。語るのにデリケートすぎるテーマに比べて描き方がライトだった気はする。まあ、本作は様々な理由で御し難い心情に揺れる人間を描いた創作ドラマだから、報道みたく中立性の担保を云々するのは甚だ不粋であるだろう。余計なことを書いたけれど、このドラマ自体はとても面白かった。
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