NM

ラチェッドのNMのレビュー・感想・評価

ラチェッド(2020年製作のドラマ)
3.0
ある男が残忍な殺人事件を起こす。
次のシーン、小さな町にあるルシア精神病院にナースだという女ラチェッドが現れる。
この二人はどう繋がるのか。一体何をしようとしているのか。
映画『カッコーの巣の上で』の登場人物からの創作。

現実離れした広大な病院に、完璧過ぎるほどおしゃれなナース服、芸術的なまでのまとめ髪、メイク、ネイル、内装、カラーリング。不自然でまるで夢の中の世界のような不思議な雰囲気。
設定がもう割と何でもありで、病院内では何でもまかり通るし完結する。
画面がほぼいつも明るいまたは明るすぎる点はホラー映画にしてはやや珍しいかも。

画が綺麗でも話は全然綺麗ではない。
精神病院、残酷な治療、エゴにまみれた病院職員、殺人等結構グロい。人に薦めるならグロが大丈夫か確認してから。

なかなかエドモンドやラチェッドの素性が明かされないので、途中から観ても理解しづらい。布石だけが示されることも多く、後々そのわけが分かる作り。バラバラな人物たちがやがてつながっていく過程がおもしろい。
一つの罪がいくつにも増えていく。

だいぶ観てから気付いたが、ラチェッドは話すとき殆ど瞬きをしていない。ずっとそうだったのかその時たまたまだったのか他の人もそうなのか分からないが。そのせいで引き込まれるような印象を受けるのだろうか。
ラチェッドは始め無差別に人を殺しまくるかに見えたが、どうも目的や理由があるようで、且つそれもすぐに終わるのではなく展開によっては何度でも変更がありそうなので次の話が気になる。なかなか心情や思い出などを語らないし、本心とも嘘とも取れ色々な想像が可能。取り敢えず過去に相当のトラウマはあるらしい。

院長の演技が特に好み。まず何となく気持ちが悪く、器が小さく、エゴにまみれていて、自信家でサイコ、いざとなると臆病者という色んな面を見せる。激しく感情を表現するのでラチェッドとは対照的。個性派俳優というか。特に重度の患者に会うとき等のあっけにとられた顔がとても面白い。嫌いな人と一緒に過ごさなくてはいけないシーンのやけくそな顔は最高。
それに最初は自分のやりたいことをするだけのやつだと思われたが、実はそうではないらしいということも徐々に分かり、役柄にも深みが出てくる。治療は自分の思い通りにしつつも、自分が医師として人を救えていない実感があり、一人で精神を追い込んで他人に八つ当たりしていた。

婦長がのちのち浮かれることになるがその様子がおもしろい。自分の都合の良いように過去や現実を書き換えているが、思い込みであることも分かっていた。
よく洋画であるが、人の目があるところで傷つけられた女性をとっさにみんなが助ける様子がとても好き。そういえば映画SATCでもシンシア・ニクソンが女性を助けていた。

市長側近グウェンドリンは仕事のできる女性だがとても純粋で、作品内では珍しく良い人(少なくとも私の観ている段階では)。癒される存在。まともな人がいると他の人が際立って良い。

婦長は序盤からラチェッドと敵対し早々に消されそうだったがキャラクターが色々と変化しストーリーの潤滑剤として活躍。

殺人犯エドモンドのキャラクターも徐々に明らかになってくる。モンスターのようではあるが、勝手にも彼なりに殺していい人間といけない人間があるらしく驚き。人が殺すところを見ると責めたりもする。食べるための鳥も殺せない。

ナース見習いドリーも、いかにもホラー映画ですぐ死にそうな役に見えたが、思ったより活躍。


メモ
『草の葉』……アメリカ、ホイットマンの自由詩集。恋愛や性愛について自由に描き、当時猥褻性が取りざたされた。
アンフェタミン……院長がよく自分に注射してる。覚醒効果。
ラチェッドと女医が出かけたオイスターバーのソース……ミニョネット。ラズベリービネガー、エシャロット、ブラックペッパー。さっぱりシャキシャキ。
富豪未亡人レノアー家の最初の食事……オイスター・ロックフェラー、ボストンクリームパイ
看護婦見習いがエドワードに運ぶ食事……ソールズベリー・ステーキ。ソールズベリー博士だか医師だかが考案。ハンバーグとほぼ一緒だが牛ひき肉のみで混ぜ物がないものが多い。ハンブルグというドイツ地名が嫌われた時代に普及したとか。高級ではないジャンクな食べ物という扱いらしい。
ヒューナ・レバー・パステーティート(パステーテ)……市長側近グウェンドリンの夫が作る、サンドイッチに挟んだレバーパテ。ヒューナーはドイツ語で鶏なので鶏レバーだろうか。
NM

NM