彦次郎

岸辺露伴は動かないの彦次郎のレビュー・感想・評価

岸辺露伴は動かない(2020年製作のドラマ)
4.0
我々はこの漫画家を知っている!いや!このまなざしとこの頭のヘアバンドを知っている!『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフで超絶漫画家岸辺露伴先生を実写ドラマ化したホラーサスペンス。
岸辺露伴は『ジョジョの奇妙な冒険』Part4『ダイヤモンドは砕けない』の敵スタンド使いとして登場。その後は共に吉良吉影を追う仲間となるも性格は傲岸不遜、漫画を読者に読んでもらうためには善悪関係なしの奇矯な振る舞いも辞さないという人物です。しかし単なる変人という訳でもなく作中で囚われの身となり死の危険があっても「だが断る」という絶対に自分の信念は曲げないという作者荒木飛呂彦先生のご寵愛を受けたキャラクターでもありました。
さて本作はドラマ化にあたりスタンドの設定を敢えて排しギフトというビジュアルのない超能力に変換、女編集者泉京香が相棒キャラに昇格、独立していた話を1シリーズとして上手く繋げていました。普通ならば原作改変としてファンから叩かれそうですが脚本がアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』を手掛けていた小林靖子氏なためか原作を尊重し実写として楽しめるように作られていたためファンからも高評価に至ったものと推察されます。また主演である髙橋一生の演技はまさにリアルティのある岸辺露伴先生で大満足なのは言うまでもなく他の演者の方も作品の雰囲気にそぐっていました。
個人的には第2話の『くしゃがら』は原作にはなく小説版が元ですが放送禁止用語を巡って志士十五が森山未來の演技力と相まって段々と狂気を帯びていくサスペンスとなっており本シリーズの白眉だと思いました。逆にPart4のエピソードを元にした話は原作にあったスタンドバトルの妙味が薄れた感があり残念でした。
アニメ版岸辺露伴役で本作でも声出演の櫻井孝宏が不貞行為を起こし問題になったり乙雅三役の市川猿之助が両親の自殺幇助で有罪になったりと何やら作品自体からも呪いみたいなものを感じてしまいますがまあ偶然でしょう。

余談。
原作は1997年のジャンプリーダーズカップ(愛読者杯)が初出。読者がアンケートで「作品を読んでみたい作者」たちを選び実際に読切作品を書いてもらいその作品を読者が投票するという企画でジャンプからの条件は「スピンオフ・外伝は絶対禁止」というものでした。律儀に他の先生が条件を守るなか荒木飛呂彦先生の読み切りだけ岸辺露伴が1ページ目から登場。先生曰く話が締まらないし主役でなくナビゲーターであるという判断でタイトルも『岸辺露伴は動かない』となったようです。他の愛読者杯の作品を書いた漫画家一覧も豪華ですがシリーズになったうえアニメ化、ドラマ化、映画化となったのは本作だけ。改めて荒木飛呂彦先生の慧眼に驚かされた次第です。
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