人生においてごくまれに
すべての事がうまく運ぶひと時、
と云うものがあるものだ。
ひとつ事に勤しんでいると
追い風が吹いていると確信できる時が、
何のまえ触れもなく訪れることがある。
日常の細々とした作業や家事、
仕事に関すること、趣味等において
或いはスポーツや様々な競技の勝負事において
はたまた創作活動や人間関係など、
人生における様々な場面で個人的なことであれ、
チームやグループで取り組んでいることであれ
神がかったように歯車がかみ合い
万事がスムーズに運び、
非常な成果をあげることがあることを
我々は少なからず経験として知っている。
その瞬間は、さながら
天に祝福されているとしか思えないほどに。
本作『クイーンズ・ギャンビット』に携わった人々は
この天の恩寵を、ひとり残らずその制作の当初から
感じていたに違いない。
それほどまでに、何から何までがピタリと嵌まり
史上有数の名作として収斂していくことを一点の疑いなく
感動と興奮を覚えながらその現場に居合わせたであろうことが
この作品を観ていると容易に想像できるのだ。
素晴らしい脚本。
洗練されたセンスの音楽と美術。
ベス・ハーモンのハイ・ファッションの何と愛らしいことか。
目と耳に心地よい作品は、心に響かざるを得ない。
本作は、べらぼうだ。
めっぽうおもしろい。
「ハスラー」や「地球に落ちて来た男」を物した
ウォルター・テヴィス原作。
全７話、ドラマの醍醐味を堪能できる至福の６時間半。
生涯の一作に加わりました。
再観必至です。
