スワヒリ亭こゆう

母性のスワヒリ亭こゆうのレビュー・感想・評価

母性(2022年製作の映画)
3.8
原作既読。
原作では映像じゃないから分からない小説ならではの仕掛けがあったりするんですけど、本作はそういう本の内容をしっかりと脚色して映画化しています。僕は映画化は大成功だったと思いますよ。

その理由としては映画化の問題点でもあるんですけど、役者さん。いわゆる配役ですね。
これが見事にハマっていたと思いました。
母(ルミ子)を戸田恵梨香さんが演じていたんですけど、素晴らしかった。
それに娘の永野芽郁さん、あっ、!
永野も良かったです。永野は最近、めちゃくちゃ良くて女優としての階段を駆け上がっていってるイメージがします。

で、本作はどんな話かと言うと「愛能う限り娘を愛している」と言っている母と、母に愛されたいけどそれが叶わずに苦しむ娘からなる2人の視点で描かれている母娘の話です。

母は娘を愛して娘の為にやっている。と言うものの娘の側から見れば真逆の語りになるんですね。
そこの矛盾が原作の見どころです。
映画でも前半はひとつの事柄を2人の視点で描いてましたね。
後半からは母娘の見えてる世界が映画の終盤まで入れ替わりはグレーにして敢えて母と娘からの証言でした。
母娘の話はどちらかと言えば娘の視点で母親を見ているストーリー。
田所家の話になると母の視点でのストーリーになっていたと思います。
小説の様に分け隔てて描いてはいなかったんですけど、時間的に簡易的にするにはこのやり方が正しいと思います。
脚色は本当に素晴らしかったです。

本作は母・ルミ子が親になる事が出来なかった事が全ての元凶ですよね。
いわゆる母性を持つ事が出来なかった話なんです。
でも、実際にそれは口で説明して母性を持てるものじゃなく、自然と子供を育てるうちにそうなるのかなぁと思います。
いや、これは僕は男だし子供もいないので説得力がないですね😅あくまで感想です。

ルミ子は実の母親を愛していました。マザコンと言っていいと思うくらい。
なので親になる事より娘でいたかった。
そして娘を持つ事で芽生える感情よりも母から与えられる愛情だけを見てしまったんでしょう。
愛情を受け過ぎてしまった挙句の成れの果てなんだと思います。
で、映画の中でルミ子は漫才でいうとボケなんですよね。
そのルミ子の話に対して娘の話が全て正しい。
ツッコミですよね。
で、ツッコんだ話の方が、よっぽど恐ろしいという。
ストーリーの内容自体が面白いし、そこに戸田恵梨香と永野の演技が併さってめちゃくちゃ良質な作品を作り上げてると思います。
戸田恵梨香の年齢差のある役作りも凄いし、今でも学生役がめちゃくちゃ似合う永野もいつまでも可愛いです。
クワバタオハラがおったらココは大阪や、でお馴染みですからね。


本作のタイトルでもある『母性』は男性には母からの愛情でしか分からない。
だからこそ男性に『母性』とは?
母娘の視点で描かれる本作を見て良かったと思います。
ドラマ『ハコヅメ』のコンビがとても良かった二人が今度は母娘として見せる演技に脱帽しました!