MasaichiYaguchi

金の糸のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

金の糸(2019年製作の映画)
3.7
およそ60年のキャリアを持つジョージア映画界を代表するラナ・ゴゴベリゼ監督が、27年振りに発表した本作は、日本の陶器の修復技法「金継ぎ」やプルーストの「失われた時を求めて」をモチーフに、過去との和解をテーマに描いた人間ドラマ。
主人公は娘夫婦らとジョージアの首都・トビリシに住む作家エレネで、彼女が79歳の誕生日を迎えた日から物語は幕を開ける。
同居する家族から誕生日を忘れられたエレネは、当の娘から彼女の姑であるソビエト時代の政府の元高官ミランダとの同居を提案されてしまう。
更にエレネのところには、60年前の恋人から突然の電話がかかってくる。
これら過去を象徴するような2人が、良きにつけ悪しきにつけ彼女の記憶を呼び覚ましていく。
ラナ・ゴゴベリゼ監督は本作について、「人間が年齢を重ねて老いていくと、人生の新しい問題が生まれてきます。老いとともに生まれてくる様々な問題への私の答えを示したかったのです。」と述べている。
本作のテーマの一つである「過去が今の自分にどういう影響を及ぼしているか」については、終盤でエレナとミランダの関係性の中で劇的に展開される。
我々は、そういった過去とどう向き合ったら良いのか?
本作は、金を糸のように使って壊れた器を修復する「金継ぎ」のように、過去に対しても愛や理解、思いやりで美しく修復することが出来るのではないか、人生がより豊かになるのではないかと提示する。