MasaichiYaguchi

マッドゴッドのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

マッドゴッド(2021年製作の映画)
3.7
名作SFで特殊効果を手がけてきたフィル・ティペットが監督を務めたストップモーションアニメで描いたダークファンタジーは、荒廃した未来世界を舞台に、地下世界に潜り込んだ孤高の暗殺者の地獄巡りを描く。
本作は元々、フィル・ティペットが「ロボコップ2」の撮影後にアイデアを思い付いて製作を開始したものの、「ジュラシック・パーク」を契機に映画業界が手作りの特殊効果からCG映像へと大きく転換したことで、プロジェクトは中断する。
それから20年を経た後に、ティペット・スタジオの若手クリエイターたちが当時のパペットやセットを発見して製作が再始動し、製作開始から約30年を経た2021年に完成したものが本作である。
主人公であるガスマスクと防護服を着けた“アサシン”が、或るミッションを遂行するために地上から地下世界に派遣される。
ところが、いくつもの層がある地下世界はあらゆるものが惨たらしく荒廃しており、醜悪な怪物どもが跳梁跋扈している。
登場するクリーチャーや機械は、ストップモーション・アニメと実写を融合させて製作されていて、その生々しい悍ましさや世界観の異様さに圧倒されてしまう。
狂気渦巻くヴィジョンを全て映像と音で表現しようとする本作は、説明的な台詞や描写が無い為に難解だが、「箱庭的」なストップモーション・アニメの世界をスケールアップし、環境汚染や強制労働、核戦争といった人類の愚かな厄災をテーマに独特なダークファンタジーを繰り広げている。