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マッドゴッドのコマミーのレビュー・感想・評価

マッドゴッド(2021年製作の映画)
3.3
【地底の地獄】




「JUNK HEAD」と比べてしまうと、「JUNK HEAD」が如何にキャラクターに愛嬌があって、この「マッド・ゴッド」と比べると優しい物語なのかを思い出させてくれる。

"フィル・ティペット"は、レイ・ハリーハウゼンの特殊撮影に魅せられて、この業界を志したと言う。その証拠に、本作の"ストップ・モーション・アニメーション"や「スター・ウォーズ/エピソード4〜6」までの技術には、ハリーハウゼンの影響と思われる技術が使われている。
かの「ジュラシック・パーク」シリーズでも、彼が開発した「ゴー・モーション」…いわゆる動くミニチュア・モデルを撮影する技法を用いる予定だったが、ILMのCG技術に仕事を奪われ、一度は絶望したのだと言う。その後、彼が監督した作品もある「スターシップ・トゥルーパーズ」ではこれまた彼が開発した「DID」…いわゆる恐竜入力装置と言われるもので、生態の動きをより"精巧に見せる"業を用いた。もちろんこれは、「ジュラシック・パーク」でも、CGスタッフ達に恐竜の動きを教えるべく採用された模様だ。

本作でも恐らく、比較的低予算で作れるストップ・モーションにゴー・モーションとDIDをうまく足して作られた作品だと言えるだろう。
本作に続々登場する"生命体"達は、まるで"恐竜のような風貌・動き"で、そして"グロテスク"である。肉塊と言うか、その何とも言えないその風貌は、恐らく過去にその世界に"核"が投下された影響だろう。それゆえにこの地下世界にはウランガスが充満している事が本作で伝わる。不思議と、観ているとその周りの"腐敗臭"やら空気の悪さが痛いほど伝わってくる。凄い作りだ。

そして本作には、ごく少数だが、"生身の人間の役者"も"数少ない人類役"として出演している。
例として、"ラストマン"と言われる役柄で「レポマン」などの鬼才"アレックス・コックス"が演じていたり、ティペットが視覚効果で参加した「トワイライト」シリーズにて同じく視覚効果で参加していた"ニキータ・ローマン"と言う女性が、地下の"看護師"役で出演している。アレックス演じるラストマンは、最終的には"何者"で、地下で働いてる人間の医師達は"本当に人類なのか"は謎のまま終わるのだが、2人ともこの世界では絶大な存在感であった。

「JUNK HEAD」と比べてしまうと、あまり馴染めない作品になってしまったが、ティペットの"芸術性"が遺憾無く発揮された作品なのではないだろうか?

今回はそうゆう事にしておきます。
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