レインウォッチャー

グレイマンのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

グレイマン(2022年製作の映画)
3.0
夏休みの宿題、決まる。

CIAの寡黙なエリート工作員シックス(ライアン・ゴズリング)と、彼の命を狙う享楽的殺し屋ロイド(クリス・エヴァンス)のアジアからヨーロッパまで縦横無尽に駆け巡る大追跡劇。

タイトルの「グレイマン」とは「見えない存在」を意味するシックスの異名。
しかし、彼が死闘を演じる場面では時に狂乱的ともいえるほど画面が豊かに色づく。花火や車のライトなど…素性を捨て色を持たない(=グレイ)男が唯一生き生きと輝くのは戦場であるということなのかと、ちょっと切なさを覚えてみたり。

冒頭から息もつかせぬハードコアなアクションの連続はカーチェイスに銃撃戦に飛行機サスペンスに肉弾戦とフルコースで、もうまったく目が離せない…

はず…が…

なんていうか…その…下品なんですが…
フフ…「居眠り」…しちゃいましてね…

なぜだ。こんなに演者も美術も豪華絢爛なのに、集中力が続かなかった。
というのも、この映画に出てくる人たちにまったく興味が持てないのだ。

もちろん、少女まで含めて潔いほどの美男美女ぶりはレーシック並みに視力が回復しそうまであるのだけれど、みんな所謂スパイもののキャラクターに「いるよね〜」以上でも以下でもない気がして、人物同士の関係性にも深みがなかった。ロイドも、あんなにイキってたわりにいざ拷問するで!となったらベタもベタなやつだし。

というか、深みを描く時間があったらアクションしようぜ!という理解が正しいのかもだが、何にせよ重なる銃撃音はやがてホワイトノイズとなって、心地よく視界を奪っていくのだった…

超絶今更気づいたのだけれど、要するにわたしはアクション(を見せることに比重を大きく振った)映画がニガテなのかもしれない。

これまでにも、「アクションのヤバさ」を売りにした映画で大好きな作品は何本もある。しかしそれらの作品におけるアクションはあくまでも(わたしにとっては)後乗せスパイスであって、本筋は別にある作品ばかりだった。

たとえば『ベイビーわるきゅーれ』はシスターフッド×ゆるコメディだし、
MCUの『ウィンターソルジャー』は2.5次元的な見方と群像劇的な人間模様が魅力で、
『アトミック・ブロンド』は半分ミュージカルだと思ってる。

アクションにしても、どうしても「彼がそのアクションをする理由」がほしいなと思ってしまう。
結局興味の中心は人間にあって、バックグラウンドや性格に納得したうえで、彼の行動や技に現れていてほしい。上に挙げた作品たちは、どれもそのあたりが一本通っていると思う。

とはいえ告白すると、実はこれまでジョン・ウィックもミッション・インポッシブルも碌に観ておらず、そういえば『ボーン・アイデンティティー』も何度も寝落ちした記憶が蘇ってきた。
ルッソ兄弟のバリューに惹かれて、こんな門外漢がノコノコ訪ねるべきではなかったのだ。それに関しては反省しきり。

純・アクション映画、集中夏期講習があれば受けてみたい。
わたしは数学と物理を高一の夏に早くも投げ出した人間であるけれど、果たして門戸は開かれるだろうか。