Jun潤

アキラとあきらのJun潤のレビュー・感想・評価

アキラとあきら(2022年製作の映画)
3.4
2022.09.11

池井戸潤原作×三木孝浩監督×竹内涼真×横浜流星。
福澤克雄以外が池井戸潤原作を映像化すると途端に不安になる謎現象。
あと三木監督と社会派ドラマの組み合わせはなかなか想像し難い…。
しかし同時期に車モチーフと列車モチーフでそれぞれヒーローを演じていた竹内涼真と横浜流星が共演となれば観るほか無し。

倒産した町工場の一人息子・山崎瑛と、大企業「東海郵船」の御曹司・階堂彬。
正反対の人生を送ってきたアキラとあきらは同じ年に「産業中央銀行」(後に「東京第一銀行」と合併し半沢直樹が“倍返し”を行う「東京中央銀行」となる)に入行。
伝統である新人研修最後の模擬融資依頼はその後伝説となる。
階堂は順調に出世コースを進んでいたが、山崎はその生い立ちから苦境の会社を見捨てることができず、銀行の不利になる行動をしたことで流刑地と呼ばれる福山支店に左遷される。
しかし、諦めることなく企業に寄り添い、適切な融資を行い続けたことで本部への復帰を果たす。
一方階堂は、親の会社である「東海郵船」のグループ企業がリゾート業まで拡大したことで巨額の負債を抱えていた。
弟の龍馬は兄への対抗心から無理矢理返済を果たそうとするが、周囲の目線に耐えきれず、心労に倒れる。
龍馬を助けるために銀行を去った階堂と、「東海郵船」とその社員の人生を救うために担当となった山崎、2人の人生を賭けた挑戦が始まる。

うーん、、福澤克雄メソッドマニュアルを使って簡略化&コンパクトにされた『半沢直樹』って感じ。
一応その中にも表情の見せ方や過去の回想を使ったキャラの掘り下げなどに三木監督ならではの雰囲気を出していましたが、専門用語を使ってもノリで押し通したり、ムカつく小物や個性と魅力に溢れたキャラクターがリレーや二人三脚で紡いでいく、いわゆる“TBS日曜劇場ユニバース”には遠く及ばない出来栄え。

上述の通り三木監督と社会派ドラマ、というかシリアスな雰囲気自体食い合わせが悪いと思っていましたが、キャラクターに凄みが無い分嫌味も抑えられていて、表情の演技やキャラの心情をそのまま受け取れる出来にはなっていました。
しかし専門用語も出せないし出したとしても押し通せるほどノせれないから、やってることもホントにコンパクト版『半沢直樹』という感じ。
描写も説明も必要最低限で済む、業界などの知識がなくてもなんとなくで押し通せる程度の塩梅になっていたのは、求めるものの違いかもしれないですが、物足りなさに繋がってしまうのではと思いました。

あとは入行10年目でも若手扱いされていたり女性行員を女の子呼ばわりだったり、日曜劇場の方にはあった強い女性たちや家庭の内助の功が欠けていたりと、時代設定がリーマンショック前後とはいえ令和にやる内容として適切だったかと言われるとそんなことも無い気がします。

しかしまぁ三木監督あるあるなメインキャラクターの仕上げっぷりはさすがでしたね。
同族経営の会社内部のいざこざに辟易として外部に逃げた階堂と、まんま半沢直樹な感じで銀行員に恨みはあるけど同じ銀行員に救われたことから銀行員を志した山崎の対比、その2人が手を組むことで、固く閉ざされた頭の古い会社や銀行に一陣の風を吹かせる、そこにはカタルシスがありましたね。

しかしどうもテンションが低空飛行だったというか、メリハリの効き方が薄く、テンションは下がらないけど上がりもしない、ずーっと低い波のまま高くなることもなく終わりまで突っ走っていた印象です。

演技については、中堅並みに成長してきた若手は100%実力を発揮していて、実力が確かな大御所俳優陣は少し抑えられていたかなといった感じですが、高橋海斗が頑張ってた。
ジャニーズだけど事務所も関わらず主演でもない、兄を妬み新社長に担ぎ上げられるけど失敗する弱々しい姿を海ちゃんが120%の演技で見せてくれました。
こういった作品には珍しい、自分の力でなんとかしようと執着するのではなく、本当に辛い時に人を頼れる人間らしいキャラクターを見せてくれました。
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