スワヒリ亭こゆう

渇水のスワヒリ亭こゆうのレビュー・感想・評価

渇水(2023年製作の映画)
3.0
30年前の小説が原作の作品です。白石和彌さんがプロデューサーを務めた作品でもあります。

主人公・岩切(生田斗真)は水道局の職員で、水道料金未払いの家に赴き、料金を徴収する。時には支払いを拒否されると木田(磯村勇斗)と共に水道を停める仕事をしています。
市民からは鬱陶しがられ何とも言えないやるせない気持ちを抱える仕事です。
彼らは前橋市の職員で、その年の夏は日照りが続き水不足になっている。そんなある日に小出という一家に赴く。そこには母親(門脇麦)と二人の姉妹がいる…小出という母親も料金は支払ってくれない…


映画を観ていて、コレは実話なのか?凄く気になっていたんですが、実話ではないみたいですね。
ですが似たような出来事は世の中に沢山あって全てがフィクションというのも少し違うと思います。
要は社会派ドラマという事ですね。

映画を観ていると料金未払いとはいえ水道管を締める事に違和感を感じてしまう。(主人公達は罪悪感だと思います)
それを感情を殺して仕事を全うする岩切。生田斗真さんはこう言ったドライな役も似合いますね。それと磯村勇斗さんも良いです。彼は売れ出した頃は悪人ばかりでしたが最近では善人の役も多くて役の幅も広くて良い役者さんですね。
彼が出ていると映画に妖うさが漂って良くなります。

本作では母親がいなくなり水道も止められてしまう姉妹がメインで描かれています。
ネグレクトと共に社会がこの姉妹にどう接するべきかを問うているんだと思うんです。ルールに従うべきか?心に従うべきか?
しかも二者択一では正しい答えは見つからない時代に来てる。もっと柔軟に流れを見て答えを見つけないといけないのが、これからの社会には必要不可欠だと感じます。

残念な部分もあって岩切という主人公のキャラクターがもうひとつ立ってないとも思いました。
水道は電話、電気、ガスよりも後に止められる。
水がないと人間は生きられないからです。
それでも水道を止める事にドライになり、心を殺して執行している。
それは分かるんですけど、人間味が無いので映画も今ひとつ薄味な気がします。
心に響くストーリーではなく、問題提起がメインに来すぎていて、そこからの映画の盛り上がりが今ひとつでした。

題材が良かっただけにもう一つと感じました。