まーしー

渇水のまーしーのレビュー・感想・評価

渇水(2023年製作の映画)
3.0
給水制限が発令された真夏を舞台に、水道局の職員が水道料金滞納者へ停水執行を行っていく社会派ドラマ。

姉妹だけで過ごすネグレクト家庭、全く料金を払う気のない若者、独居の高齢者……料金を滞納する家庭は様々。
そのような家庭を1軒1軒訪問し、料金支払いの督促を繰り返し、そして給水の停止を行う水道局職員の岩切(生田斗真)。
特に、母親不在の姉妹と岩切の交流を分厚く描いている。

タイトルの通り、この姉妹と岩切からも「渇き」が感じられる。
姉妹は、出ていった父親の存在や、不在がちな母親の愛情、さらにはお金を求めている。
また、妻子と別居中の岩切も、家族愛に飢えている。
不足する「水」を通して接点を持った姉妹と岩切は、互いに不足するものを補い合う、共依存の関係のように見えた。

太陽や空気はタダなのに、なぜ水道は料金を払う必要があるのか──劇中では、このような問題提起がなされている。
この点、私ならこう答えるだろう。太陽や空気と違い、水道は施設や水道管等の維持管理にコストがかかるから、と。
では、全て税金で賄ったら良いのでは。そうすれば、本作で登場するような水道局の職員たちの労力や苦悩がなくなるのでは。
……この問いに対して、今の私は答えを持ち合わせていない。利用量の違いから来る不公平感や、水の過剰利用を招く恐れがあるからだろうか。

命の源である水を題材にした本作は、観客に重いテーマを突き付けていると思う。
主演の生田斗真に加え、門脇麦、尾野真千子らが脇を固めるキャスト陣も豪華。
ただ、岩切の内面に軸足を移した後半は、やや置いてきぼり感があった。岩切の取った行動に共感できなかったので、並の評価で。
ちなみに、原作は映画とラストが異なるとか。私は映画版のラストの方が良い。