まーしー

女王陛下のお気に入りのまーしーのレビュー・感想・評価

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
3.0
イギリス女王を取り巻く愛憎劇。海外版『大奥』といったところか。

『哀れなるものたちへ』のヨルゴス・ランティモス監督らしい作品。
チャプターに分かれた構成、独特の書体によるテロップ、魚眼レンズを通して覗いたかのような部屋の映し方など、同監督の特徴ともいうべき演出が随所に見られる。

ストーリーは、英仏戦争の最中、心身ともに不安定なアン女王(オリヴィア・コールマン)と、その幼馴染のサラ(レイチェル・ワイズ)、そして侍女から成りあがるアビゲイル(エマ・ストーン)の三角関係を描いたもの。
特に、アビゲイルが恐ろしい。時には泣き、時には優しさを振りまく。自ら体を張り、ライバルのサラを嫉妬させるだけでなく、自身の地位をも押し上げていく。
「綺麗なバラにもトゲがある」——アビゲイルを見て思い浮かんだ言葉である。

しかし、一人の女性の出世を描く作品でもない。
3人の女性の関係が刻々と変化する、その微妙なバランスの描き方がお見事。3人の誰かが一時的に一番上のポジショニングをするが、そう長続きはしない。
体調の変化や弱みを握られる場面など、色々なエピソードを交えながら、3人の関係が変化していく。

そしてラスト。誰が勝者になったのか——ヒントはタイトルに隠されているだろう。
オリヴィア・コールマン、レイチェル・ワイズ、エマ・ストーンという演技派3人が紡ぐ物語は、外形上の華やかな宮廷生活とは程遠い、ドロドロした権力争いだった。