Jun潤

ホリック xxxHOLiCのJun潤のレビュー・感想・評価

ホリック xxxHOLiC(2022年製作の映画)
3.4
2022.05.01

CLAMP原作×蜷川実花監督×神木隆之介主演。
原作は未読ですが先生の存在とその美麗な作画は知っていて、それを画面の美しさに定評のある蜷川実花が、柴咲コウを始めとした顔面つよつよキャストをそろえて映像化とくれば、過去最高レベルのビジュアルの暴力を浴びないわけにいかない。

他人には見えないモノが見える少年・四月一日(わたぬき)。
彼が見えないことを望むと、目の前に不思議な空間が現れる。
そこは願いが叶う“ミセ”。
“ミセ”の女主人・侑子に願いを叶えてもらうには、願いを叶えるための対価「一番大切なモノ」が必要と、四月一日は告げられるも、自分にとってのソレがわからない。
現実に居場所がない四月一日は“ミセ”の家政婦として働くことになる。
現実で出会った百目鬼とひまわり、そして“ミセ”に訪れる様々な客たち。
彼らとの交流の中で、四月一日の中に変化が現れ始める。
そんな折、四月一日に付き纏う不審な影・女郎蜘蛛とアカグモが暗躍し始める。

こ、これは!“美”!!圧倒的“美”ジュアル!!!
素晴らしい、素晴らしすぎるほどに美しい。
まずはキャスト、神木隆之介については後程。
柴咲コウの眼、磯村勇斗の唇、玉城ティナのツインテール、松村北斗の片乳首、そして吉岡里帆のおっぱい。
ビジュアルがおつよすぎて鼻血出るかと思った…。

しかし「美人は三日で飽きる」とはよく言ったもので、そんな圧倒的ビジュアルも中盤までくればインパクトも半減…。
その分ストーリーでキャラ付けができていればよかったものを、なかなかそうもいかず。

各キャラ単体として見るとそのビジュアルにそれぞれのキャラクターが付与されていましたが、如何せんキャラ同士の掛け合いや関係の描写が足りず、深堀りがされていなくてキャラ解釈に至らなかった印象が強め。

それはそれとして、『ダイナー』では水、『人間失格』では花と、各作品で象徴的なビジュアルを用意してきた蜷川実花監督が、今作で強く打ち出してきたモノ、個人的な見地では「音」と「煙」と「影」です。

まず「音」については、上述のビジュアルつよつよのキャスト陣ながら、それぞれ「声」に特徴がありました。
柴咲コウはハッキリとしてそれでいて神秘的、松村北斗は甘美な重低音の中にある優しさ。
物語を彩るBGMやSEもさることながら、「声」の印象が強く残る作品でした。
しかしなんというか、集音の際の音域設定に対する演者の声量と言えばいいのか、聞きやすいセリフもあれば音割れしているセリフもあり、聞きやすくした結果作品から浮いているものもあって、もっと演者の声を信用してもいいのにななんて思ったり。

そして「煙」。
これはアヤカシの不気味な感じが、「煙」の域を超え、水のような砂のような粘土のような、様々な質感を伴って表現されていたのが印象に残りました。
あとはなんといっても侑子さんの紫煙。
侑子さんの妖艶な雰囲気を一層押し上げていました。
ただ終盤、手の形のCGが多用されていて、個人的に蜷川実花監督はあくまで実物の美しさを表現する人だと思っていたので、そこにCGを足されると凡庸になってしまっていた気が。

最後に「影」。
これはもう文句のつけようがなく、表情の陰影や、実物とは違う動きをするといった王道のものだけでなく、建物の影が長く伸びていく描写を時間の経過ではなく不気味さや存在感を押し上げるために使っていたのが印象に残りました。

そしてキャストについて、これも上述の通りビジュアルつよつよの面々がその見た目に合った動きや演技をしていただけでも十分でしたが、今までの印象を変えてきたのが二名ほど。
それは趣里と吉岡里帆です。
趣里の演技というかセリフの感じがとても苦手で、出演作も敬遠しがちでしたが、今作では立ち居振る舞い、一挙手一投足の存在感がスゴい。
あの場面だけ彼女の一人舞台のように全て飲み込んでいました。

そして吉岡里帆、エロい!エロすぎる!!
ソ◯プ嬢か!!
あれで反応しない神木隆之介と松村北斗は仙人かなにかか。
コホン、今まではグラビア上がりの演技勉強中女優のイメージが貼り付いていましたが、今作では踊るような立ち居振る舞い、動きの一つ一つにセクシーを乗せているような演技が印象的でした。
セクシー所作指導なんてお仕事があるんですね、素晴らしい。

そして先程後に回した神木隆之介。
もう言うことなしですね、完璧。
原作のキャラクターは知りませんが、今作だけで、序盤の自己肯定感が低く、女性に対しても童貞臭さの抜けない少年だった姿から、ラストのアノ姿に至るまでの演技の変化や、モノローグいらずの表情も最高でした。

物語としてはなー、面白い設定ではあったものの、四月一日の成長や他人との関わりをビジュアルで表現してしまったためか、全体的にダイジェスト感は否めません。
願いを叶える“ミセ”、憑かれたひまわり、世界を壊す女郎蜘蛛の三軸が入り乱れて、アレ?今何のために動いてるんだっけ?と反芻が度々必要になったり。
一作で終わらせず二部作とかにして合間の客たちの描写にも尺をかけて欲しかったところ。

あとは邦画の悪い癖。
妄想が広がる匂わせエンドではなく悪い意味で丁寧に、ズルズル引き摺る終わり方にワイヤーバレバレな邦画ジャンプ、ムムム…。

そして所々鬼滅や呪術を意識しているようなビジュアルも。
ストーリーが勝ってないんだから、同じ土俵に無理矢理立たなくてもいいのに。

どこまで関わっていたのか分かりませんが製作に西野亮廣の名前があって笑っちゃったんですよね。

作中で語られた「必然」と「運命」について。
似てる言葉に見えて非なるもの。
個人的な解釈としては「必然」は「然るべくして必ずおこること」、「運命」は「命を運ぶみち」。
「偶然などない、全ては必然。」結果は「必然」であり、そこに至る「運命」は自らの選択である、そんな風に感じました。

「この世に自分だけのものなどなく、自分もまた誰かのもの。」
Jun潤

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