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メタモルフォーゼの縁側のmaroのレビュー・感想・評価

メタモルフォーゼの縁側(2022年製作の映画)
3.5
2022年日本公開映画で面白かった順位:51/88
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★☆☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

原作漫画が5巻と読みやすいボリュームだったので、それを読んでからの映画鑑賞。
こんなに優しくほっこりする世界があったのかっていうほど心が温かくなる。

同じような経験がある人もいるだろうけど、サブカルの趣味が一致するって、それだけで親近感湧くよね。
パッと見、仲良くなれなさそうに感じても、実は映画とかゲームとか、自分と同じ趣味があるってだけでいい人に見えてくるというか。

その趣味がニッチであればあるほど、まわりに言いづらければ言いづらいほど、同志を見つけたときの感動は大きい。
『花束みたいな恋をした』(2021)でも麦くんと絹ちゃんの距離を縮めた要因のひとつは、サブカルの共通の趣味だったし。

しかも今回は、17歳の女子高生と75歳のおばあちゃんっていう、58歳も歳の差があるふたり。
「ええ?!おばあちゃんが興味持っちゃう?!」っていうギャップもよかったんだけど、ずっとBLの楽しみを誰かと分かち合いたかったうらら(芦田愛菜)にとっても、ようやく見つけた"至福の時間"っていう点でなんか安心しちゃう。

「趣味によって人生はもっと楽しくなる」
「いくつになっても新しい発見がある」
「人生に楽しみを見出すのに年齢は関係ない」
そういったメッセージを、うららと雪(倍宮本信子)が体現しているのがとっても心地いい。
雪が漫画家の先生に、「あなたの漫画のおかげで友達ができました」とお礼を言うシーンは感動的。

でもこの作品、映画よりも漫画の方をオススメしたい。
映画も2時間の中に綺麗にまとめたと思うんだけど、原作漫画の方がもっと丁寧に描かれてて。
具体的には、うららの心情表現がすごく多い。
セリフもそうだけど、特に心の声ね。
単にBLの趣味を雪と分かち合うだけでなく、うまく人付き合いができないことをもどかしく感じているところや、せっかく雪と仲良くなってもっとBLを薦めたいのだけど、自分だけ突っ走っちゃってないかなと自制するところなど、すごく優しいというか気にしいな性格が存分に発揮されてる。
映画だとそこがちょっと弱かったかな。
あと、漫画の方が時間がゆっくり進んでいる分、もっと牧歌的な雰囲気が出ていて読みやすい。

そんなわけで、女性同士の友情を描いたいわゆるシスターフッド映画として、すごく楽しめる作品だった。
共通の趣味によって生まれる友情。
簡単に言ってしまえばそれまでだけど、離れすぎている年齢差を一瞬にして埋められる力がボーイズラブにもあるという、元気をもらえるような話だった。
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