白百色

メタモルフォーゼの縁側の白百色のネタバレレビュー・内容・結末

メタモルフォーゼの縁側(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

普段、刺激!興奮!を求めて映画館に足を運ぶことが多いのですが、高橋恭平くんが出演しているということで見に行ってきました。

芦田愛菜ちゃん、宮本信子さんが主演ということでまず間違いないだろうとは思いつつ、日常系のゆったりとした作品を見ることがあまりないので途中で飽きないかな……という心配も抱きながら映画館へ。

結果、鑑賞して本当によかったです。生涯忘れることのできない作品に出会えました。

最近、仕事って好きじゃなきゃいけないのかな?嫌いでも不得意でもないし、むしろ義務感ややりがいだって感じる。でも、伴う成果や社会へのインパクトを考えた時にこのままでいいのかな〜と何となくモヤモヤする毎日を過ごしていました。そんな矢先、「好きじゃないです。でも、やるべきことをやっている気がするので悪くないです。」のうららちゃんの台詞に強く胸を打たれて涙が溢れました。そうか、たしかに私もそうだなって。無理に好きになろうとしなくても、「悪くない」って思えれば、それだけで十分なんだなって。救われました。捉え方一つで世界の見方は変わるなあ。うららちゃん、ありがとう。

その他にも、「私たちこの漫画のおかげでお友達になれたんです」なんて言われたらたまらない気持ちになるなあとコメダ先生目線で思ってみたり、「小市民は"せめても"の精神よ」に自分なりに日常ちょっと頑張っていることを認められている気持ちになれたり、雪さんの自宅にある「好加減(いいかげん)」の掛け軸の趣深さも、冒頭で紡カップルから逃げるためだったのが終盤には紡とえりのために走った高架下も、まさきくんの兎に角画数の多い習字も、急な母親の趣味にも「私も実は気になってたの♡」と偏見なくフラットにかえせる花江さんも、遠くから来た人のストーリーも絵も、演出から台詞から好きなところを挙げれば本当にキリがない。

雪さんの包丁づかいは見ていて不安になる時もあったけど(笑)

挑戦の大小に優劣なんてないし、ましてやそもそも挑戦に大小なんて概念も存在しないんだなって気付けて、心がふっと軽く優しくなれました。

また、いわゆる"推し"の存在が生活に彩りを添えている人生なので、うららちゃんが咲良くんに向かって話しかけているシーンは痛いほど共感できたし、推しを通じてできた年の離れた友達が学校の友だち以上の存在になることも知っているので友人たちの顔が浮かんで無性に泣けました。あと、エンドロールに流れる「これさえあれば」の歌詞が正しく推しに思っていることの全てで、映画を見ながらわたしの推し〜いつも本当にありがとう〜😭の気持ちでいっぱいだったので、溢るる涙を止められませんでした。

「大事なものは大事にしなきゃね」は本当にそうで、それは人間関係も夢も希望も目標も自分の気持ちも全部そうで、頭ではわかっていてもなかなか実行できないことだったりするので、この作品を見て改めて深く落とし込むことができた気がします。

公開舞台挨拶で芦田愛菜ちゃんが「"縁側"は、落ち着く家の中とこわい家の外を繋ぐ存在だと思っています。この作品が新しい風を呼び込むきっかけになってくれたら。」といったニュアンスの挨拶をされていて、あまりに素敵な解釈だったので強く印象に残っています。愛菜ちゃんの言葉通り、この作品は私にとって、心の風通しを良くしてくれる"縁側"のような存在になりました。一枚扉の向こう、新しい世界に挑戦する勇気が出なかった時、カレーの香りにつられてこの作品に戻ってきたいなって思えました。あ〜!!!とっても素敵な作品だった〜!!!!
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