あんだーそん

ハケンアニメ!のあんだーそんのネタバレレビュー・内容・結末

ハケンアニメ!(2022年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

冷めたつまらない大人の私は、この熱い映画の熱量に微妙にハマれず、粗が気になってしまった。嫌な大人になってしまったな…。

ここからはめちゃくちゃ嫌な大人の感想です。

原作未読ですが、まず話の構造がわかりづらい。小説を2時間映画にまとめるのはかなり大変なのだと思いますがそれでもわかりづらい。

①そもそも覇権ってなんで取らなきゃダメなの?絶対1位じゃなきゃダメなの?裏かぶりのアニメの対立構造を作って煽っているのはメディアだけど、その対立構造にわざわざ自分からのっかって「覇権をとります!」と主人公が宣言し勝つことにこだわった意味は?
主人公の「私のような子どもたちに刺さるようなアニメを作りたい」という元々の気持ちと「憧れの監督のアニメに勝ちたい!」という気持ちはどこでどう結びついた?やっぱりライバルがいて1位とか目指さないと頑張ってる感出ないよね〜という製作者側の作為を感じる。

②SNSのコメントの表現など今風っぽく作っているのに、テレビはリアルタイムの視聴率主義ってイメージもちょっと違和感。今は動画再生回数などもあるし、視聴率だけでは人気なんて測れないでしょうに。また、実態はわかりませんが、王子監督側プロデューサーの尾野真千子が、王子監督の逃亡の際に上層部に囲まれてきつく詰められるシーンもテレビ局の体育会系的なイメージ表現にちょっといつの時代のパワハラ…?と感じました。

③メインの制作会社と下請けの作画担当の会社の構図も予備知識がないとわかりづらい。アニメの舞台となった地域の市役所の担当者との絡みが途中で出てきますが「なんで地方の学校?で試写会が開催されているのか?」と思ってしまった。スタンプラリーの話とかわざわざ必要かな?

④「監督」の仕事の描き方について。有名監督である王子が看板背負ってプレッシャーや孤独と闘っている表現はわかりやすいですが、無名初監督の主人公の場合は「チームでアニメを作ってる感」を描いているにもかかわらず、そこで王子監督と同じようなプレッシャーや孤独を強調されるとちょっと独りよがり感があります。

⑤中盤で主人公が同僚に結城プロデューサーの悪口を言われて「私が(結城プロデューサーを)信頼してるんだから!」とキレるシーンがありますが「いつのまにそんなに信頼関係築いてたんだ…?」とちょっと置いてけぼり。

⑥主人公をわざと崖っぷちに立たせるような描き方がちょっと古いかなと思いました。最終話を変更するという主人公に「コケたらもう二度と監督できなくなるよ」というような脅しの台詞が出てきましたが、最終話の出来栄えだけで二度と監督ができなくなるほど今後のキャリアに影響が出るのだろうか…。「若い女の子が窮地に立たされながら頑張ってる」図に少し頼りすぎかなというような気がする…。

⑦主人公の人物像が形成された経緯がわかりづらい。どこでそんなにアニメにこだわるようになった?王子監督の神アニメをみて人生が変わったのは大人になってからなので、子どもの頃の孤独がアニメで救われたわけではないはず。幼少期から積極的にアニメに関心があったわけではない主人公が、大人になってから出会った神アニメだけでオタク的なカルチャーの下地もないのにそこまでの熱量もてるかな?という疑問。

⑧小野花梨✕工藤阿須加とか中村倫也✕尾野真千子とか無理に恋愛要素盛り込もうとしなくてもいいのに。恋愛要素は「お約束」ってやつなんですかね?

理屈でみるといろいろツッコミたくなるので、理屈ではなく感情でみたほうがいい映画です。批判的なことばかり書いてますが、劇場では泣きました。熱くひたむきに仕事に向き合えるってやっぱりいいよね!この映画も製作に関わるたくさんの人たちの苦労と努力が重なってできたものなんだろうな、と。みんなキャラが立っているので観ていて楽しい。フィクション、お約束、ご都合主義上等!のお仕事映画として、それこそアニメをみるような気分でみたらちょうどいいかもしれません。吉岡里帆は可愛かったし、柄本佑も中村倫也のキャラもよかったし、小野花梨の演技はさすがだったし、他の出演者も素敵でした。
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