この映画はいわゆる安楽死制度の是非を問う作品ではなく、その安楽死制度を利用する社会の在り方に対する問題提起だと思う。
表面上はあくまでも「国民の皆様ひとりひとりの意志を尊重した素晴らしいサービスを提供します」という体裁をとりながらも、「社会のお荷物である高齢者はさっさと死ね」と言わんばかりの、積極的すぎる行政の支援活動の様子が細部に描かれていて薄ら寒さを感じた。「PLAN75」というキャッチーなネーミングもそうだし、「住民票がなくても申し込める」「家族の同意も不要です」なんて、そんなお手軽な制度にしないでほしい…。これじゃあまるで国による合法的な自死誘導制度だ。
自分で死期を決められるような制度ができること自体には賛同できる。けれど、その制度がどのように運用されるかというところで社会の在り方がまったく違ってくると思う。現実の日本の未来がこの映画のようになってしまったら…と思うととても怖い。
