Kuuta

RRRのKuutaのレビュー・感想・評価

RRR(2022年製作の映画)
4.1
アクションの強度は現行の映画界最強。ただ私は、神話ネタの散りばめ方に沼のようにハマってしまっている。語弊を恐れずに言えば庵野作品のようなノリだ。

入門書をかじっただけで無限にこじつけられてしまう多層性に困惑しつつ、私なりに一つ紐解いてみる。

ラーマは「マハーバーラタ」における文明的戦士、弓を武器とする英雄アルジュナをベースにしつつ「ラーマーヤナ」の主人公ラーマでもある。

対するビーマは「マハーバーラタ」での野生的な森の人、腕力に長けた兄ビーマが元ネタだろう。大食漢な設定も劇中で回収されていた。「ラーマーヤナ」でラーマを助ける猿ハヌマーンも兼ねている。ハヌマーンは薬草でラーマの傷を癒す逸話がある。

ヒンドゥー教の最高神は守護者ヴィシュヌ、破壊者シヴァ、創造者ブラフマー。

①ラーマはヴィシュヌの化身。ヴィシュヌは太陽の象徴で、ラーマのシーンには炎や太陽が盛り込まれる。

②ビーマはシヴァの化身。ビーマのシーンに現れる月や瞑想、ガンジス川=水のイメージ。ヘビの毒を癒す場面。

③ブラフマーの化身がヴィヤーサ。ヴィヤーサはマハーバーラタの著者であり、マハーバーラタの物語の中に「ヴィヤーサ仙」というキャラクターとしても登場する人物。物語の作り手であり、キャラクターでもあるこの人は、今作におけるラージャマウリ監督に他ならない。創造神としての監督は、エンドロールでキャラクターとして登場し得る。

【結論】
ラーマとビーマとラージャマウリが並ぶstoRy、fiRe、wateR=RRRとは、ヴィシュヌ、シヴァ、ブラフマーが揃い、インドが国として成立していく過程を示している。

以下箇条書き。

・2本の紐が結びついたり、反発したり。虎を捉えるロープの罠、日常で見慣れない突飛な場面のはずなのに、ビーマの体への圧のかかり方は誰にでも想像できる。バーフバリでも感じたが、この辺のリアリティラインの設定が抜群に上手い。

・画面に人しか映らない。唐突に現れる人間ピラミッド、説明足りなさすぎて楽しい。人を吹っ飛ばすと、そのエネルギーが連鎖していく。先導するエリートと共鳴する農民。上半身と下半身の一体化=肩車。

・ナートゥ、英国式の庭で砂埃が舞う違和感の気持ち良さ。この辺までの勢いが素晴らしすぎるだけに、やや中弛みは感じた。バラーラデーヴァのような強敵がいないので、2人が手を結んだ時点で、それ以上のカタルシスが生まれようがない。女性キャラも物足りない。

・実在の人物、歴史を取り入れている故の若干のモヤモヤ。フィクションに振り切っていたバーフバリの方が好みだった。
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