Omizu

ダイ・ハードのOmizuのレビュー・感想・評価

ダイ・ハード(1988年製作の映画)
3.8
【1989年キネマ旬報外国映画ベストテン 第1位】
ブルース・ウィルス主演の大ヒット映画。娯楽アクションでありながら緻密な脚本や敵役アラン・リックマンの演技が高い評価を受けた。アカデミー賞では編集賞他全4部門でノミネートされ無冠に終わったが、日本ではキネ旬1位になるほど高評価。

キネ旬1位を眺めたときに明らかに異質の存在だったこの映画。シュワルツェネッガーやスタローン映画みたいな筋肉アクションが1位?と思っていた。しかし宇多丸さんの続編評や解説を読むとそうではないと分かりずっと観たいと思っていた。

なるほどこれは非常に上手く出来ている。伏線が張り巡らされ次々と回収されていく緻密な脚本、主人公と警官の無線を介した友情とその葛藤、主人公が頑張れば頑張るほど事態が悪化していくという皮肉な展開など脚本がとにかく素晴らしい。

また基本コメディであるというのがいい。マクレーンが放つブラックジョークが不謹慎で笑える。緊迫しているのにスナックをこっそりつまんだり女性のヌード写真にワンタッチしたり。

浅はかなマチズモとはほど遠い「情けない」主人公に設定し、妻ホリーの出世を邪魔しようとしたことを最後に悔やむ。マッチョなパッケージングとは180度異なり進んだ価値観を提示しているのもいい。

ただリムジンの運転手に関しては黒人のステレオタイプではないかと思う。パウエルとの友情を描き最後のヒーローにしたのは素晴らしいが、運転手のキャラ造形はあまりに白人の考える「バカな黒人」そのままでは。

また脚本は概ね素晴らしいが終盤ご都合主義的な展開が目立つ。マクレーンがビルから落ちずに済んだのは完全に運がよかっただけなんだよね。そこまでがよかったから粗が気になる。

とはいえ娯楽映画に必要なものが全て詰まっているし、変化球クリスマス映画としても秀逸。キネ旬1位は過大評価な気がするけどアクション映画というジャンル自体の格を大きく上げた一作ではないかと思う。
Omizu

Omizu