香乃

百花の香乃のレビュー・感想・評価

百花(2022年製作の映画)
5.0
監督とスタイリストさんとのQAタイム付きの試写会で、製作の意図まで見えて忘れがたい映画体験になった。

完璧なものに美を見出すのは当たり前のこと。むしろ不完全なものさえ美しくしてしまう、それこそが愛であり、稀であり、特別なものである。全てを忘れ去ってしまったときにも残るのは、そういうもの。完璧じゃないからこそ愛おしく、忘れられない。

美しいものを見せるのではなく、大したことないものを美しく見せるには、そこにある何かを観客にインストールせねばならないわけだから、すごいテクニック。みんな感動してたんだから、そういうことだと思う。

上映後のアンケートの「どのシーンで泣きましたか」には「泣いてない」にマルしたけど、帰り道自転車漕いでるときに色々思い出して泣いた。自分の中の、いびつで、忘れられない思い出が溢れ出てきて。

激中のAIアーティストにネガイメージだったのでエンディングテーマが流れたときびっくりしたんだけど、おかげでそれを質問させてもらえたことでコアを理解できて、いい思い出になった。

このテーマはずっと生き方のコアに残り続ける気がする。そういうものに出会えてよかった。

見たいと思ったきっかけは菅田だったけど、蓋を開けてみたら持ってかれたのは原田美枝子さんだった。女優ってこういうことなんだな。圧巻圧倒。参観日のときの誇らしげな笑顔、泉に子どもが生まれるとわかったときの無邪気な笑顔、そしてラストシーンの言葉にできない笑顔。もうあの顔を見るためだけでも劇場行く価値ある。歩き方もうちの母親にそっくりで、自分の母親を見てるようで胸が痛すぎた。おばさんってみんなあの歩き方なの?あとあのダサいカーディガンもリアルすぎて💦💦💦まじ親。

しかも今朝タイムリーに母親と喧嘩してしまってたので、帰ったら謝ろう。。終わりがあると思えないと大事に出来ないなんて恥ずかしいけど、、そういうもんだよね。

思い出のカットはドアップでぼやけてるのも、記憶のおぼろげさ曖昧さ不確かさを感じられて好きだった。曖昧な思い込みが終盤にかけてひっくり返っていくところに感動もありつつ、小さな謎が解けていくような気持ちよさがあった。(家の中に一輪挿ししかないのは、泉がくれた花が一輪だったから、、🥺)

音楽についてもすごい共感できて、「挿入歌は嘘。映画の中の世界では音楽なんて鳴ってないんだから。それをどうリアルに繋げてくか」ってとこ禿同だった。ヤンくんと一緒に映画見てるといつも「はいこの挿入歌ダメ」っていつも言われるので、「まじそれな〜!その視点で作ってくれてありがとう一生ついてく」の気持ち。ピアノが途切れて現実に引き戻されるのもよかったし、不協和音になっちゃうのも、壊れていく頭の中を感じられてよかった。そこも含めて、全て心地よい計算がされてるんだなーとQAタイムで尚更。生まれて初めて、作品だけじゃなくて監督を好きになったかも。


好きだったせりふ
「こんなに綺麗なのに、いつか忘れちゃうのかしら」← めちゃくちゃわかる😭😭😭
「親だからって完璧になれるわけじゃない」
「稀なものを作りたい」これがクリエイター。。


ほか忘れたくないこと
・見ていたものに見られるのが映画的(伊賀さん)
・神経細胞が死んでいく=アルツハイマー
・残された大量のご飯と母親の組み合わせis地獄
・ファーストカットは一輪挿しの中の枯れた花
香乃

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