ヘイヘイ

百花のヘイヘイのレビュー・感想・評価

百花(2022年製作の映画)
3.8
川村元気監督とスタイリスト伊賀氏登壇のティーチインあり試写会で一足早く鑑賞!

〈ネタバレなし部分です〉
鑑賞直後の率直な感想は、”あれ?思ってたのと違うやん!(いい意味で)”です。
個人的に、日本映画によくありがちな観客に台詞で何でもかんでも説明しすぎな作品が好きでないので、まずそこがとっても良かった!

そもそも川村監督は筋金入りの映画通ですし、売れる/売れないを重視する敏腕プロデューサーでもあるので、そういう方がどんな作品を作るのかなぁと結構興味ありました。

ティーチインで川村監督が「スマホじゃなくて劇場で観てもらうための映画を目指した。あえて細かいカット割も避け、スクリーンに集中させる。日時生活に一続きでカットもないので。」という想いを語られていて、作品観た後だと、あらためてなるほど〜👂と目から鱗でした。

まだ公開が1ヶ月先ですが、少なくとも”よくある日本映画ではなかった”という感想です。隣の方は途中ポロポロ泣かれてましたし、自分も何度かじ〜ん、とくるとこがありました。やはり親族に認知症の方がいると、より思うところが強くなるかと。

ここから先は、映画観た人本を読んだ人用のネタバレ入ります!





























原作小説は未読、予告編だけみて鑑賞。「まぁ、王道な感じの認知症映画なのかな。」のイメージで観ていたら…

認知症の母が記憶の中で放浪するあのホラーな感じ。何度も子供時代の映像をカットバックさせながら、記憶の空白が埋まっていく演出等々、鑑賞しながら行間を埋めていくタイプの作品であったので結構意外でした。

個人的には、一度は子を捨てた母を描いたシーンが印象的で、あのシーンにはヒヤッとしました。(現実の埋め込み方が、最近観ていた「二十五,二十一」がよぎりました。)

長澤まさみと菅田将暉のバス車中の会話で
「親が結局ずっと正しいとは限らないから」
友人が自分は不倫していると話すファミレスのシーン
「あの人が好きなの。でも人には言えないじゃない、だから日記に書くの」
あたりは、結構グサグサっときましたし、川村監督は女心もわかるのね、と。
母であり、その一方でひとりの女性なんですよね。

自分を捨てた母。
今でも本当に愛されていたのか、もう知る術もない。そんな母が最後まで覚えていたかった記憶は、子供の頃に自分と見ていた半分の花火だった事に気づく。

母と息子の関係が簡単なものではないからこそ、ラストのこの邂逅シーンはとってもエモーショナル。

また、円にならない=完全なものにならない、ていうメタファーが様々なシーンに取り入れられてるようなので、2回目はそこにも注目したいです。
(初回は恥ずかしながら全然気づかなかった)

川村監督がまず小説を書いたきっかけとして、自身の祖母が認知症になった経緯が大きいとお話されてました。

自分も大学生の時に、留学中に母方の祖母が脳梗塞からの重度のアルツハイマーを発症しました。日本に帰ってきた時には、ほとんど言葉も話せない、意思疎通もできない状態でしたが、それでも母親は毎日看病していて、問いかけに対する答えもめちゃくちゃなのに病院でずっと話しかけてたのを思い出しました。
それでも、うちの母親にとっては、どんな状態であれ、”わたしのお母さん”なんですよね、いつまでも。自分の母親がこの作品を観たら、どう感じるかなぁと。

あと、ちょっと気になったのは、やっぱりバーチャルアーティストのとこですかね。。題材に合わせてるのはわかりやすいですが、ラスト付近にある台詞は、ちょっと関連性を出そうとしてるのが透けてみえるようでなんだか説教チックに感じてしまいました。。(小説では、またちょっと違うようですね。)


と、色々書きましたが、自分は鑑賞中も色々なことを思いながら、観た後も自分の家族のことを想うきっかけにもなった良い作品でした。

※伊賀さんって「大豆田とわこ」も担当されてるんですね、センスとってもよき!
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