同居していた祖母の痴呆が進み、帰省するたびに介護施設に会いに行っていたずいぶんと昔。
祖母は父のことだけが思い出せなくなり、最後の方は父を銀行員と勘違いしてた。その度に哀しみを含んで笑い飛ばす父がいやでも泉と重なって、湖のシーンで泣いた。あの頃私は父が少しでも苦しくないように、一緒に笑って側から離れないことしかできなかったよ、おばあちゃん。
忘れないことなんてできない中で、なにを憶えていたいのか。忘れてしまうと気付いている中で、なにを伝えておきたいのか。
どうせ最期に残るのが自分に都合良く解釈した記憶なら、私は私が納得するように私なりの愛を伝え続けていたいよ。そんな当たり前の感想しか持ち合わせていないけど、今度実家に帰ったら父と母を抱きしめようと思いました。
相変わらず菅田くんの演技は本当にすばらしく。毎回凄みが更新されている。笑顔が一瞬で冷める表情、居なくなった焦り、許せないがゆえの拒絶、他人のような距離感。所作ひとつひとつで親子の溝が十分に伝わった。
天音くんもチョイ役ながらいいスパイス。
