長回しとワンシーンワンカットでアルツハイマーの徘徊や短い時間での会話の変遷を捉えたり、被写界深度の浅さと背中からのショットの多用、脇役は顔すらはっきり映さないとか、映像面は面白い試みをしてる。
でも、冒頭で電気をつけずに部屋を捜索するのは無理があったり、お約束感のあるアップの入れ方は気になる。
記憶と忘却、罪と赦しを、完全なAIと不完全な人間の対比に重ねるところは説明的でうるさい。
女親の一人息子へのべったり感と、母の過去を知ってから知らずか身体的接触を忌避する描写は良かった。
神戸パートの母の描写にウンザリすることへ溜飲がさがる感じ。
面白い部分とつまんない部分がサンドされてて、こういうメジャーな役者と細部だけどマイナーなアプローチの作品がロードショー公開で見れるのはいいことのような、そうでもないような。
全部忘れてないから赦せないと思っていた人間がラストシーンで、忘れていたことを思い出すことて赦しに辿り着く。
ひとり親で、捨てられても憎むこともできず、捨てられたから愛に不信があった人間が記憶を取り戻して知る、忘却と赦し。
そして、便宜上、愛と呼ぶしかない感情が残るだけ。