MasaichiYaguchi

屋根裏のラジャーのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

屋根裏のラジャー(2023年製作の映画)
3.8
イギリスの作家で詩人のA・F・ハロルドによる小説「ぼくが消えないうちに(The Imaginary)」を、スタジオポノックが映画化した長編アニメーションは、想像によって生まれた“イマジナリーフレンド”を主人公に、現実と想像が交錯する世界で起こる冒険をエモーショナルに描く。
少女アマンダの想像が生み出した少年ラジャーは、彼女以外の人間には見えない「想像の友だち(イマジナリ)」だ。
ラジャーは屋根裏部屋でアマンダと一緒に想像の世界に飛び込み、喜びに溢れた毎日を送っていたが、イマジナリには人間に忘れられると消えていくという、避けられない運命があった。
アマンダに忘れられれば、世界中の誰からもその姿は見えなくなり、消えてしまう。
そんな自分の運命に戸惑いながらも、或るアクシデントを切っ掛けに一縷の望みを抱いて歩み始めたラジャーは、かつて人間に忘れさられたイマジナリたちが身を寄せ合って暮らす「イマジナリの町」に辿り着く。
そこでラジャーと仲間たちは、彼らの大切な人や家族の未来を懸けた冒険を繰り広げることになる。
近年、毎日のように世界は戦争という残酷な現実を我々に突き付けている。
多様性が叫ばれながらも、現実には歴然とした差別が蔓延っている。
そんな現実の残酷さに、時に落ち込み、絶望する昨今、この「イマジナリ」を題材にした本作は、「屋根裏の誓い」が象徴するように、愛に溢れた想像で、決して諦めない戦いを鼓舞する。