Jun潤

映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝のJun潤のレビュー・感想・評価

3.6
2022.04.22

昨年から連続で劇場版鑑賞です。
前作がめちゃめちゃ面白かったですし、今作は野原一家が主役になりそうだったので期待値はモリモリです。
クレヨンしんちゃん映画化30周年記念作品。
『宇宙人シリリ』『新婚旅行ハリケーン』橋本昌和監督×『カンフーボーイズ』『花の天カス学園』うえのきみこ脚本。

5年前、しんちゃんが生まれた日、同じ病院で生まれた子供がいた。
そして現在、花火大会に向けて野原家で盆踊りの練習をするカスカベ防衛隊の面々。
そこへ、しんちゃんの本当の母親と名乗る女性・ちよめと、ひろしとみさえの本当の子供と名乗る少年・ちんぞうが来訪する。
素性も目的もわからぬ女性に困惑し帰そうとするひろしだったが、謎の術をかけられ、結局一晩泊めることに。
その夜、謎の忍者集団が野原家に侵入。
実は忍者だったちよめは、激しい闘いの末、ちんぞうと間違えられたしんちゃん共々捕らえられ、忍者の里「へそ隠れの里」に連れ去られる。
そこでしんちゃんは地球のへそを目撃し、その場所を守るために忍者幼稚園に通うこととなる。
一方、野原家ではちんぞうから事情を聞いたひろしとみさえが、しんちゃんが持ち出したみさえのスマホから位置を割り出し、しんちゃんを救うべく行動を開始する。
果たして、しんちゃんはとうちゃんかあちゃんと再会することができるのか、そして、地球の運命はー。

うーんこれはこれは、いつになくしんちゃんが可愛い。
これまでの作品でもしんちゃんが連れ去られたり、野原一家が親の愛情から立ち上がり奮闘する描写はありましたが、ここまでしんちゃん自身の気持ちにフィーチャーし、ひろしとみさえのしんちゃんへの想いを掘り下げた作品はなかったと思います。
それほどまでにしんちゃんにフォーカスした物語で、それを強調するように、対比の存在となるちんぞうのキャラクターも仕上がっていました。

個人的に印象に残ったのはやはりしんちゃんの涙ですかね。
今までもしんちゃんが泣く作品はありましたが、こんなに胸に突き刺さり、なおかつとても純情な感情で、さらには離れた親を想っての涙という普遍的な感情というのは初めてな気がします。
初めてしんちゃん個人の感情に泣かされました。

ちんぞうもゲストキャラクターとしては十分すぎるほどに仕上がったキャラでしたね。
里での掟しか知らず、子供ながらに自身の使命と運命を悟り、感情に蓋をしている。
子供の目から見る初めて触れる外の世界というだけでも心にクるのに、今までの我慢が全部溢れ出る場面で涙腺が崩壊しました。

あとは個人的な今作の最高潮はひろしみさえとしんちゃんの再会シーンですね。
言うと感情の起伏が小さくなってしまうのでここでは省略しますが、爆笑から号泣までの流れがあまりにも急すぎて、もはや感情がジェットコースターでした。

おそらく意図してでしょうが、今作はしんちゃんにしては珍しくかなり風刺の効いた内容になっていたと思います。
地球のへそという純金の塊が、地中のエネルギーが外に出ないようにするための栓であることを知りながら採掘をやめない。
事態がマイナスに振ってもその場凌ぎの対策をして警戒レベルを挙げるだけ。
さらに権力者たちは里で暮らす人々よりも既得権益の方が大事。
なんだか環境問題やらコロナ禍の対応やらを想起させる苦めなブラックコメディにもなっていました。

そんな時代に合わせてか、敵の副官や親猫など細かいところから、みさえとちよめの大活躍など、女性、特に母親の強さに焦点が当てられていました。
しかしその分それを支える父親の描写は薄め…、なんだかなぁ。

なんだかひまわりとシロの活躍も突然でしたし、最後はやっぱりカスカベ防衛隊。
野原一家が主役とばかり思っていたので不意を突かれましたが、しんちゃんが主役の話としては満点でしたね。

あとクレヨンしんちゃんといえば、テレビ本編劇場版関わらず、敵味方問わず、クセ強めのユニークなゲストキャラクターが大きな魅力の一つですが、今作ではそれがイマイチだったかなぁ…。
へがくさいぞう、べえとうべんけい、わびたさびひこ、ネーミングセンスとキャラ造形は相変わらずパンチが効いていたのに活躍どころがもう少し欲しかったところ。

最近の劇場版しんちゃん、ちょっと社会的影響が強すぎやしませんかねぇ…、いや、割と昔からそうかも…。

来年はついにしんちゃんも“しん次元”へ。
果たしてどうなることやら。
しんちゃんらしいおバカっぷりを引き続き期待です。
Jun潤

Jun潤