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ピンク・クラウドのmのネタバレレビュー・内容・結末

ピンク・クラウド(2021年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

どうにもならないことにエネルギーを使う女と諦観する男。


雲はそれとして、コロナを経験したからこその粗探しもしようと思えばできるけど、この作品は密室下における行きずりの2人の対話、そして価値観の転回に本質がある気がする。

先行き不安な密室で子どもを作ろうと宣うヤーゴ、ジョヴァナに拒絶されると「君は自己犠牲をためらっている」と貶する。ヤーゴはそもそも誰の部屋に住まわせてもらっているのかを忘れているところがあり専横な振る舞いをよくしていたが、ここに彼の本質、楽観的・おざなりなところが現れていたように考える。
反対にジョヴァナは、外界と断絶されているにも関わらず外の事件に強く関心を抱き、ヤーゴに軽くあしらわれる。それに激しく憤る彼女はヒステリック・被害妄想なところが強く出ており、彼女は彼女で問題を抱えていたように思う。


会話のみならず、価値観の転回も面白い。前半の 夢想を追い求めるヤーゴ⇆現実を見るジョヴァナ から 後半の 家庭を回すヤーゴ⇆仮想現実に入り浸るジョヴァナ へと価値観や振る舞いの変化が起きている。各々の身内に起こる事件が2人に現状に対する不安を抱かせ、作品の序盤に出た性質からの逃避を行なったように思えた。
その結果、現実を見るヤーゴが家事をする中(恐らくこの頃にはヤーゴが家の収入のほとんどを賄っていたと思う)夢想に入り浸るジョヴァナは生まれた子を放りVRに没頭する。


会話も価値観も、2人が対話を行うことができれば不安の解消は可能であったと思う。彼らは身内の問題に向かう時は必ず1人だったから。2人での対話を行うシーンはほとんどが揉めていた。
そしてそれは誰かになりきってマンネリ解消に勤しむことではなく、何も言い返せない子供に向かって相手の不満を吐露することでもなく、自分の心のうちを相手に預ける→信頼する事だったのかと考える。
その過程をおざなりにすることは共同生活において致命的なのだと感じた。




あとピンク描写が多くて男1人で観るのは惨めだった。
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