すずき

バッドガイズのすずきのレビュー・感想・評価

バッドガイズ(2022年製作の映画)
3.2
盗み・運転・詐欺の達人ウルフと、軟体と金庫破りの専門家スネーク、暴力担当クレイジーなピラニア、隠密とハッキングの天才タランチュラ、そして演技と変装の名人シャークで結成された窃盗団バッドガイズ。
だが、ウルフは偶然に命を助けてしまったお婆ちゃんに感謝され、心に妙な感覚を覚える。
それがミスを呼び、彼らはあえなくお縄に。
だが、街の名士であるマーマレード教授が彼らにチャンスを与えた。
教授はバッドガイズ達を邸宅に呼び、善人へと生まれ変わらせる為の教育を開始するが…

動物キャラ達による、「オーシャンズ11」のようなケイパー映画…かと思いきや、脚本にツイストが加わるドリームワークスのアニメ作品。
前半4.0、後半2.4で間を取って3.2のスコア。
前半の良い所の多くを後半でぶち壊し。
良い所・悪い所がハッキリしているので、レビューが書きやすい!
だから今回は長々と語ります!

本作は主人公達が動物キャラなので、「ズートピア」のような世界観かと思っていた。
だが本編開始後すぐに人間も登場し、どうもそうではない事に気付く。
初期「ドラゴンボール」のような、動物と人間が暮らす世界観だとしても違和感がある。
動物キャラは主人公達と、メインキャラであるダイアン知事とマーマレード教授のみで、背景のモブにすら動物キャラはいない。
なるほど、これはメタファーなのか。
つまり、彼らが狼や蛇の姿なのは「他人から恐れられる存在」を表しているのであって、実際には彼らは人間なのだろう、そう解釈した。
狐のダイアン知事は「切れ者」?で、マーマレード教授はモルモットで「誰からも愛される存在」。
途中、主人公達は明らかに動物ならではのアクションや能力やをふんだんに使うが、これもメタファーであって、実際には道具を使ったり、人間としてリアリティラインを超えない範囲での行動なのだろう。
そんなお子様には難しいメタファーの構造に加え、「パルプ・フィクション」を彷彿とさせるオープニングに、これは大人に向けた作品なんだな…と思った。

だが、問題は後半。
黒幕の最終目的は、隕石のパワーで世界中のモルモットを操って現金を強奪する、といういくら何でも荒唐無稽に過ぎる、明らかに子供向けなもの。
今まで多少無理矢理にでもリアリティライン内に収まるように解釈していたが、流石にこれはラインオーバー!

しかも黒幕が「誰もやった事のない、世界最大の盗みをする」と公言するぐらいだから、地球ごと盗む、とか全人類の自我を盗む、とか色々期待したけど、結局額面が増えただけの現金かよ、とガッカリしたのもマイナス。
クライマックスのアクションも盛り上がらないし、黒幕の倒され方や裁かれ方もモヤッとする。

この映画で1番良かった点は、ウルフとスネークの友情関係、特にスネークのウルフに対するクソデカ感情だ。
ウルフと共に悪の花道を歩んで行きたいスネークと、善に憧れ、自らの中にある善の感情に揺れるウルフ。
彼らは互いを思いやるが、すれ違い、裏切り、失望し、本音をぶつけ合う関係性の変化は熱過ぎる!
男同士のこういう関係は多分、婦(腐)女子のお姉様方も好きなハズ!

続いて、この映画の1番悪かった点を述べる。
それはヒロインであるダイアン知事の存在だ。
この映画は明らかにウルフとスネークのラブストーリーなのに、そこにダイアンが不純物として間に挟まる。
よく、「百合の間に挟まる男」という言葉があるが(※ピクシブ百科事典を参照)、ダイアンは「ブロマンスの間に挟まる女」だ。
しかもこの女、大活躍する。
ほとんどバッドガイズの上位互換で、「もうアイツひとりでいいんじゃないかな」状態の最強キャラ。加減しろバカ!
「マトリックス レザレクションズ」でトリニティがネオ以上の救世主っぷりを見せたり、MCUの「キャプテン・マーベル」が雑に強いチートキャラだったり、女性最強キャラは流行りだけど、どれもあんまり面白く扱えていない。
なんでもかんでも、ポリコレの影響だ!ポリコレは映画をつまらなくする!とか言いたくないけど、雑な女性最強キャラブームに無関係ではないのかも、と邪推。

最初に述べたけど、前半は良かったんだよ。
後半の絶海の刑務所に移送されたシーンから、全て作り直してくれないかな…。

…まだ良い所を書ききれてないので、もうちょっとだけ続くんじゃ。
主人公たちバッドガイズのキャラクターは良くって、彼らと警察署長の捕物劇はご存知「ルパン3世」を彷彿とさせる。
アニメーションの大袈裟な身振り手振り車振りも、まさに「ルパン3世」の宮崎駿アニメーションをオマージュしているだろうし、もっと言うなら「名探偵ホームズ」(犬の方ね)だ。
また、人間キャラの顔がディズニーの「私ときどきレッサーパンダ」のキャラデザと似ているのも、影響の元ネタが近いんじゃないかな、と推測。
カートゥーン的ではありつつも、日本作品からの影響が大きいアニメーションは、見ていて楽しかった。