すずき

ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画のすずきのレビュー・感想・評価

3.1
山あいの小さな村に住む、有機野菜農家のジョシュと温泉施設で働く女性ディーナ。
彼らは、ジョシュの知人ハーモンにボートを送り届ける。
3人はボートに爆薬を詰め、湖のダムを爆破しようと環境テロを企てていた。
しかしハーモンから事前に聞いていた計画から、いくつか変更点があり…

「ファースト・カウ」のケリー・ライカート監督作品。
淡々と話が展開する、いかにもインディペンデントやミニシアター系の犯罪ドラマなのだが、あまりにも淡々とし過ぎだ!
爆破決行後を描いた中盤まで、物語はほとんど動かない。
説明する台詞少なく、匂わせるような描写は丁寧だけど冗長。

中盤以降は、登場人物の立ち位置も心情も大きく変化し、俄然惹きつけられる。
犯罪を機に変化していくジョシュとディーナの2人は、同監督の「リバー・オブ・グラス」を彷彿とさせるが、その内面は対照的。
「リバー・オブ・グラス」の場合は、主人公に取って相手を幻滅や不必要になって切り捨てるような形で着地する。
だが本作は、ジョシュはディーナに自分を重ね合わせているように見える。
その上で2人の関係は、あのような形での着地となるのだから、「リバー・オブ・グラス」より辛く悲惨に思える。
それは男と女の考え方の違いかもしれないし、やらかした事に対する因果応報の大きさの違いかもしれない。
ラスト、彼はどうなるのか描かれず、やや唐突に幕を閉じるが、自分を重ね合わせたディーナがああなった以上、彼は自らを罰するより他ないんじゃないかな。