jonajona

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのjonajonaのレビュー・感想・評価

4.0
すごく新しいものを観ている!と
感じさせる演出の面白みがあった。

家族の崩壊と並行世界の破滅をリンクさせて大々的に展開するノリノリでトチ狂ったマルチバースアクション映画!
極大と狭小単位の世界が『可能性と選択』というテーマでもってリンクしてたりする脚本は本当に見事だと思うし、マルチバースの概念の解釈や使い方があまりに自由でみながら思わず膝を打つ表現が沢山あった。

小気味良くてポップでノリがいい。
なんとなく『フリクリ』を想起する。

キャッチーな目玉のシールや伊勢丹の紙袋のような見た目の謎の巨悪のポスタービジュアル、見てわかりやすいイヤモニの安心感と突飛な行動がトリガーとなるという毎回味変が起きるジャンプシーン。このキャッチーでポップな雰囲気が、攻めてるトリップ映像表現と相乗効果で特別な映画を見てる気持ちにさせてくれる。

クレしん劇場版のような家族巻き込まれファンタジーかと思ってたらもっと深くアジアの禅の思想に接続した上で『空なり』の空虚さ、それを超えて意味をなす無意味さを物語映像表現として示してくるのはかなり驚かされた。
いざ見せてもらって思ったのだが、アクションとキリスト教はシンボル化しやすく噛み合わせがいいが、禅や仏教とアクションは思想が映像にしにくい難点があるのではないか。それを魅力的に形にするとなると、なるほど『空なり』は『ベーグル』になる!これは本当にすごい発明だと思う…笑
アジアのアイデンティティーとアメリカ制作の混合がこの突拍子もなく確からしいアイデアを実現させたんだろうか。素晴らしい。

マルチバース世界を飛び回りながら戦う、と字面にすると理解できそうだけど映像として並行する世界を一つのドラマに重ね合わせて明快に描くのって相当ハードル高いだろうし、できてるのがまずすごい。実際意識はこちらにもあちらにもあり頭の中で二つの世界を同時に体感してる様を映像として見せてくれる。猛スピードで捲し立てるテンポの良さもすごい。

しかし個人的な好みとしてこれほど勢いのいいSFアクション映画なのに肝心のアクションでスローモーションを多用しすぎなのはすこし物足りなかった。
マトリックスを意識してるのは随所見て取れるし大変上手く行ってるとも思ったが、過剰なスローモーは見ている体感時間を長くするし、アクションのカタルシスを損なってるとは思う。

一点ほんとに嫌だったとこ。わんちゃんを使ったブラックジョークだけは看過しがたく笑えなかった。大概のものは笑い飛ばせるんだけどこれはスベってる。ウケ狙いで犬が酷いことされてるのは真顔になっちゃう。恋愛小説家のわんこダストボックスin!は笑えたんだけどな…ふしぎ笑

総括すると全体的にめっちゃ好きな物語構成と映像表現なのだが、不思議と冗長に感じてラスト付近では少し疲れていた。感動の直前でトーンダウンさせられる箇所も所々あり、自分にとっては惜しい映画というかんじ。まだなにがしっくりこなかったか消化しきれていない。
キャラの魅力という意味では主人公であるお母さんがいまいち身勝手で(そもそもテーマ的に別世界線への憧れ、今に後悔を抱いてるキャラなのは理解できるが)それを補う魅力は提示されてなかったようにも思える。
しかし新鮮な魅力に溢れた映画であることも間違い無い。気付けば最後には心地よい気分にさせてくれる。

PS,えッッ!?!?キーホイクアンってインディジョーンズ魔宮の伝説のあのショーティ君か?うは〜そうだったの‼︎ひょえ〜
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