滝井椎野

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスの滝井椎野のレビュー・感想・評価

4.2
混沌としてるようでシンプル。
様々な色が混じり合って出来た闇をベーグルの真ん中に見る。そこに超絶カンフーをプラスすることでこれまでに見たことのない作品に仕上がっている。それでいて内容は一本芯が通っており、テーマが分かりやすくて良い。
観る前に予想していた内容と違い、結構純粋なファミリームービーで、最後はホロリとさせられた。

あのときああすれば良かった……。こうすればよかった……。そういう場面が人生の節々にあるが、そのときの選択肢がすべて無駄ではなく、選んだ未来も選ばなかった未来もすべてが自分の糧になるのだという造り手の想いを感じることができた。

個人的に特に面白かったポイントがいくつかあるのだが、その中でも白眉は戦闘シーン。ジャッキー・チェンを彷彿とさせる、超絶技巧でありながらもコミカルなカンフーアクションは何とも真似をしたくなる。
また、『マスク』を彷彿とさせる敵のコミカルというよりはギャグといったほうが近いであろう能力も、ギャグ漫画のキャラクターがガチで戦闘をしたらこんなにも恐ろしいのかと、冷や汗が出た。

贅沢を言うならば、せっかくのマルチバース世界をもっとみたかった。それぞれの世界の能力を使えるという設定を、カンフー以外でも遺憾なく発揮する様をみてみたかった。
とはいえ、全体的に満足。
滝井椎野

滝井椎野