うめ

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのうめのレビュー・感想・評価

4.0
正しく紐解くのは困難だが、
この映画、
かつてない大胆不敵な
さまざまな要素の融合による
奇跡的な結晶であることは間違いない。

カンフーとアメコミ
人種差別と格差とLGBTQ+
母と娘の愛情物語と
中国系移民のアメリカンドリーム
ひと昔前の懐かしいドタバタコメディと
パラレルワールド。
まるで混ぜごはんのような映画。
まさに、混ぜるな危険、である。

ところが、ここには、
単なる B級映画とは片付けられない
無限の広がりがある。
壮大なスケールは中国のベストセラー小説
あの「三体」を彷彿とさせる。
この新しさは
配信時代における
映画のネスクトステージの予感すらする。

今回オスカーのライバル作品にはどこか既視感があった。
そういう意味ではダントツで見たことない映画でありオスカーに近い存在だったのかもしれない。

恐ろしいことにこの映画は、
ジェットコースタームービーのくせに、
アイデンティティとは何かをじわじわ投げかけてくる。

母は母であるが、女性であり人間であり、
中国人であり、
結局何も変われないという面では
大自然の中の岩にすぎない。

ついて来れるか?と言わんばかりに攻めてくる。
かなり飛ばし過ぎだが、その理屈、
悔しいけど、わからなくもない。
やがて母も娘も受け入れていく、
自己の肯定と解放。
辿り着いた答えに思わず胸が熱くなる。
僕は途中からなぜかフェリーニを思い出しながら見てしまった。
だけど、やっぱり B級香港映画のような気もする。
映画自体がパラレルでオールアットワンスなんだな。

脳天を打ち砕かれる清涼感とでも言うか、
まあ、とにかく厄介な映画が生まれたもんである。
うめ

うめ