シミステツ

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのシミステツのネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます

貧困、移民、マイノリティ。クィア。夢への憧れ。
取り柄がない。可能性の海にどこにでもいる。失敗もどこかの成功へ枝分かれしていく。ひとはみな、何者かになれる(なれる時がくる)。ありそうだった世界。あり得たかもしれない世界、素晴らしい世界が待っている。

絶対的なものなどない。人それぞれの多様性の中で、相対的に、文脈的に価値が生まれる現代で、自らの信じた道、価値観は誰かにとってはどうでもよくて。そんな通じ合わなさ、絶望的でメランコリックな世界。「分かりあわなさ」は分断を生み、他方で熱狂も生む。そんな真理の中で、本当に意味のあるものはわずかでも、大切な人を、ものを信じて生きていくこと。それが大事なのである。

ウェイモンド。怖いから、混乱してるから争う。楽観的であることは世間知らずではない。世渡りのひとつでもある。愛をもって接することの象徴としてのギョロ目。

「あなたは一人じゃない」

「最も愛するものは最も傷つく」
という言葉も印象的。

レズビアンだっていいじゃない。

「I am your mother」は完全にスター・ウォーズだね。(『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』で2人で銀河支配しようみたいなところ)

ウエストポーチカンフー、バックブリーカーやドロップキック、アクションも破天荒。ジョイ(ジョブ・トゥパキ)の出てきたシーン、めちゃくちゃクリエイティブで好きだった。お尻に突っ込むのもイカれてるし、モザイク警備員よかった。

靴の匂いで現実に引き戻すみたいのは、クレヨンしんちゃんのひろし然り万国共通なのだなと思った。

「ほんの小さな決断で生涯は大きく変わる」

めちゃくちゃよかった。
テーマはモリモリで批評界っぽいけど、
愛がある。希望が持てる。未来を信じられる。魂を感じた作品。