bosco

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのboscoのレビュー・感想・評価

4.8
“可能性”と“愛”についてのお話。

異なる世界線と繋がることができたら?
誰しもが夢想し、焦がれたことでしょう。
その人生を一寸間借りできないものか、と。

“可能性”とは思いつく限りなら、実際大したものではないのでしょう。
自身の知能の限界点すら超えた“可能性”を目のあたりにし、疑似体験した時に残るもの。
もちろん筆舌に尽くしがたいが、悟りはたまた諦観ないし絶望、であるかと。

それだけに“可能性”の集合体は無敵かつ、脅威に為りはてたのだろうが、岩は動けなかったのではない、動こうとしなかったのだ。
どんなときもやっぱり、愛がなくちゃね。

触発されて模様を変えていくそれぞれの世界が、ひとつの輪郭へ収まっていく様は、久々にとんでもないモノを観たな、と。

さて、アカデミー賞受賞作の傾向として、社会の貧困層・貧富格差が描かれている、というのは最早お約束。正直辟易している部分ではある。
本作にももちろんテーマの1つとして盛り込まれているのですが、陰鬱に為りかねないこのテーマをヌンチャクのように振り回しながら暴れ回って、家族愛に着地するエンターテイメントに仕上げているのは、いい意味で期待を裏切られました。
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