さわだにわか

操られた目撃者のさわだにわかのレビュー・感想・評価

操られた目撃者(1946年製作の映画)
3.6
殺人現場を目撃した女がショックから硬直状態になってしまうという導入部の無茶加減は製作年を考慮しても相当なものだが、突飛なのはそこだけで女が殺人者であるこの医師のクリニックに入院させられ医師と看護婦の隠蔽工作の犠牲になりつつ、様々な偶然によって医師と看護婦の計画が徐々に瓦解していく過程はなかなか渋いサスペンス。ヒッチコックを思わせながらも切れ味に乏しい夢のシーンなどを見るに『白い恐怖』風の映画を…という発注を、どうあのセンスを真似ていいかよくわからない職人監督が、序盤でそれっぽいシーンをいくつかとりあえず出しながらも、そこではなくオーソドックスな殺人者の隠蔽工作のパートで本領を発揮した、という映画なのかもしれない。

最初誰だか分からなかったヤングイケメンなヴィンセント・プライスが隠蔽工作の深みにはまっていくにつれ徐々に眉間の皺が増し怪奇映画のヴィンセント・プライスになっていくところは見物。プライスの影が大きくなっていく最後の殺人シーンなんか怪奇映画そのものです。これといった探偵役を置かずに殺人者自身が焦燥感や罪悪感から壊れていく物語に神経質なプライスは適役で、実質的に彼を主人公とする破滅型のノワールってな感じの映画でしたね。面白い小品。
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