ぜにげば

すずめの戸締まりのぜにげばのネタバレレビュー・内容・結末

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

見ました。ブラックパンサーとRRRの同日に。
その割にレビューが遅くなったのは、上手くまとまらなかったからです。
色々と怖くて。

僕が今までどう新海作品を見てきたかと言うと、学生の頃に君の名は。を劇場で見てドハマりし、人生で初めて複数回劇場で見ました。思い入れがあります。
そこから過去作を見たりして、一時期は新海ファンだったと思います。(別に嫌いになったわけじゃなくて落ち着いた)
天気の子が公開された時も観に行って、天気の子に関してはハマりませんでした。
ただ「分かりたい」という気持ちはめちゃくちゃ湧いて、理解しようとして、「今作結局男が世界と女を天秤にかけて女を選ぶだけの話じゃね?」って気づいたら、それはもうとっくの昔に“セカイ系”とか“ボーイミーツガール”とかの言葉で言い表されていて虚無感を覚えた記憶があります。
また、天気の子が君の名は。との繋がりを示唆する描写が多かったことと、次回作もRADWIMPSと作ると知っていたので、今作「すずめの戸締まり」で評価が変わるかなと思ってました。
そこについて先に述べると、今作は“災害三部作”とは言われているものの、前2作に対してあとから評価を変えるような類のものではなかったため、僕の中では天気の子はそんなに好きでは無い作品に落ち着いてしまいました。

映像面、新海監督の愛、些細な不満点、メインの感想の順に書いていきます。

・映像面
やっぱりすごいですね。
ずっとリッチ、質が落ちる瞬間が全くないアニメーション作品ってのは、ジブリとか以外では多くないのでやっぱり新海作品凄いなぁと。
君の名は。や言の葉の庭の時点でも凄かったのに、そこから年月分正当に進化し続けてるのは本当に凄いと思います。
まだ上限が見えない凄さがありますね。


・新海監督の愛
ルージュの伝言のシーンやミミズの使徒っぽさなど、露骨な愛あるオマージュが沢山ありましたが、そこに意味は何も感じれませんでした。
悪い意味で愛でしかないオマージュは個人的にはあまり好きではないかなぁと。
庵野オマージュの扉のシーンは作品の戸締りと干渉するため、最後の最後の電車のシーンだけでしかやらなかったあたり、やはり意味は無いかなと思います。
天気予報に君の名は。のBGMを使う意味もよく分かりませんし、もっと意味を持たせて欲しいです。(あの高校出身のキャスターってことですかね?)

それと、九州の中でも宮崎な理由はなんなんですかね?


ウェルフィン「ハヤオ…?」


・気になったところ
「大事な仕事は人に見られない方がいい」ってのはどういう意味合いなんでしょう。
ちゃんと読み取れてないかもしれませんが、僕は逆だと思います。見られてなくてもいいとは思うけど、見られない方がいいことなんてありますかね?うーん。

ダイジンはどういうキャラなのでしょうか。「うちの子になる?」の対比とか子供っぽい声とか、すずめっぽさは感じるけど、設定上先輩の閉じ師ですよね?分かったら面白いだろうなあとは思いますが。どちらにせよ閉じ師の設定の掘り下げはもう少し見たかったかな。それがあればもっともっとワクワクできたと思う。

途中で会った女の子が寝る時も口紅ついてたのは違和感しか無かった。

・メインの感想
設定や中盤までのロードムービー的な展開はまあ普通に楽しめました。
設定にはワクワクしましたし。

ただ、正直当事者じゃないのに怖かったです。楽しくない怖さがありました。また、当事者じゃないから「怖かった」と認める勇気も、言う勇気も無かったのでレビューが遅くなりました。
「当事者は数万倍の恐怖を当時味わったんだよ!!!」って、自分に対して思ってしまいました。
「当時生きてた日本人は皆当事者」みたいな意見もあると思いますが、そういう話ではないです。僕自身が自分を当事者だと思えないので当事者ではないです。珍しく親族にも一切被災した人とかいないので。
なので、すずめの成長には全くもって共感が出来ませんでした。本当に全くもって。分かるけど置いてきぼりにされる感じ。

(ここで言っておきたいのは、僕と同じ当事者では無い人でも、今作を楽しめた人、すずめに共感できた人は沢山いると思います。
自分に対しては図々しいと思いますが、そういう他者に対して図々しいとかは全く思いませんし、思ったことが全てだと思うので、その感覚を大切にしていて欲しいです。)

前作天気の子も共感はあまり出来ず置いてきぼり感がありましたが、今作は女の子がイケメンを求める話というのもあってかより共感が出来ませんでした。
共感以前に「イケメンだから」で済ますのはどうなのとも思います。
ナンパが話の支えって。
なので、途中から面白さは個人的にはあまりなく、ただの恐怖体験でした。
もちろんゼロではないですが。

今作で救われた人が沢山いるのは知っていますし、今作を否定するつもりはないです。
ただ、今作を好きな人たちが「映画でやっていい事じゃない」などの意見を排斥しようとしている雰囲気は恐ろしいと感じますし、今作による見えない“被災者”を失念しているのは危ないとすら感じます。
「身を守るため」という大義を振りかざして強いるのは暴力になってしまいます。

災害教育というのは、言うなればワクチンです。
ワクチンがウイルスの感染や悪化、死者数を減らす効果があるのと同時に、副反応により苦しむ可能性があります。
基本的にはリターンの方が大きい場合がほとんどですが、個人差があり、100%はないので強制することはあってはなりません。
だからこそ、国全体でそのリスクと必要性を両方報道する必要があり、強制してはいけないからこそ「協力要請」などという不思議な日本語が生まれたりもします。
災害教育も同じで、学んでいればいざと言う時に自分や周りの命を救う可能性が大いにあります。
そしてその効果は「災害は怖い」という意識にある程度は比例して大きくなると思います。
しかしながら、その災害教育自体が過程で見せられる悲惨な映像などによりトラウマを植え付けたり掘り返したりという副反応を起こしかねません。
なので、どの程度の映像までを見るのか自分で選択出来るべきで、例えば学校などが強制力を持って授業の一貫と言う名目で見せてしまうようなことはあってはなりません。(出席の同調圧力などもありますし)

今作のような映画の場合、それに近いことが起きてしまいます。
途中で離席することは難しくはないので授業の例えと比べその点においては安全ですが、お金を払えば情報を入れてない人が誰でも見られる環境や、ワクチンの例と比べ注意喚起の少なさ(公式Twitterなど見ない人も多いし、記憶では劇場予告でもなされてなかったはず)、そもそもが娯楽であることなどから、“不意をつくようなもの”であったと思います。

それはどうなの?と僕は思いますし、全員がそう思うべきだと思います。
「新海監督良くやった!」「蓋をしすぎるのは良くない!」と思考停止で否定的な意見を否定することは簡単ですが、今作は作品そのものに向き合うだけでなく、一人一人の意見に対して、一人一人が向き合う事にも大きな意味があると思います。
同時に読み取るリテラシーも大切です。
今作にトラウマを植え付けられた人、掘り起こされた人がいたとして、その人たちの大半はレビューサイトにレビューは書かないと思います。
正確には書けないと言った方がいいでしょう。答えは明白で、トラウマになってるからです。
そういう、目に見えない人がいることを理解しその人たちにも寄り添える人になって欲しいです。
(サイレントマジョリティーとか声なき声とかって言うんですかね。マジョリティかどうかは知りませんが)

今作を純粋に面白いと思えた人は、自分の幸福さを噛み締めるべきでしょう。

2022/12/10追記
否定的な意見を否定しちゃう人は多分、「まぁた警察湧いてるよ…」のノリで思考停止で言っちゃってるんだろうな。
思慮が足りてない。至ってない。
何度も言うけど、今作に救われた人や素直に面白いと感じただけの人もいれば、トラウマを植え付けられた或いは掘り起こされた人もいるわけで、せめて前者は後者に対して優しくあって欲しい。


2022/12/27追記
閉じ師について掘り下げないとダメだよなやっぱり。
見える人と閉じる人が同じじゃないとダメなんてルールないし、筋肉ムキムキの人連れてくればいいじゃん。
実行も弁明もないまま震災を防げなかったって事実が残るのは舐め腐ってるわ。
腹たってきた。
点数は1にしようかと思ったけど、アニメーションに関しては世界レベルに良いので、流石に2点は付けずにはいられなかった。
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