近藤りょうや

すずめの戸締まりの近藤りょうやのネタバレレビュー・内容・結末

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

新海誠監督、災害三部作の集大成の作品。


感想を綴ることすらも躊躇ってしまうような、現実の災害をテーマに、真正面から描ききった作品。

僕は被災者ではないから被災者の方々の気持ちは情報として受け止めて、思いを馳せることしかできないけれど、こんなに大作でこのテーマを描ききった新海監督は本当によくやったと思う。

僕はとても誠実な描き方だと思いました。

そして、いかにあの震災と正面から向き合うことから逃げていたのかを痛感しました。
被災した方の心の傷がどういうものなのか。
もちろん映画で描かれているものだけではないと思いますが、心がぐちゃぐちゃになって、涙が止まりませんでした。

映画館だからこそ、席に座って、上映終了まで逃れられない。まさしく映画館で観るべき、強いメッセージのこもった映画で、(これも表現が難しいのですが)素晴らしい体験でした。


映画の構成も、ロードムービーとして、愛媛、神戸、東京と、巡り会う人達が暖かい人ばかりで、毎回グッと来てしまう。
初めて会ったばかりなのに、「鈴芽は何が正しいことをしてくれている気がする」と、みんなが肯定、応援してくれる姿勢に、自分もこういう思いやりを大事にしたい、と思えたし、鈴芽の人柄も、みんなから愛されることが納得できるような素敵な人柄でした。


草太もとっても魅力的なキャラクター。
自己犠牲の精神で閉じ師を全うし、死ぬ間際で生きたいと願うのはとてもリアルで人間くさいし、「大事な仕事は人から見えない方がいい。」
というセリフに胸打たれました。働く全ての人々に刺さる言葉なのでは。


ダイジンもかわいいし、話の終盤までどんな行動をとるのかわからないハラハラがあってよかったです。
観終わって色々整理する中で、ダイジンのことを想うと、ずっと要石として日本を守ってきたこと、助けてくれた鈴芽を想う純粋な気持ちから、最後に再び要石になることを決意するのがなんとも切ない。。。


いい意味で予想を裏切る衝撃作でした。
これからの新海誠作品がとても楽しみです。