きしん

すずめの戸締まりのきしんのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.2
お返しするー!鎮まりたまえー!ってこれはアシタカか。

隕石、雨、に続き今回も災害ファンタジー。
なんか君の名はで大衆化して(きたと個人的には思っている)以降、年々なんか飽きてきたな。
もっとキモかったりエモかったりニッチな映画作ってほしい。
商業的にはそうも言ってられんのだろうけど。でもハードルは確実に上がってんで?

相変わらず空にブチ上がるの好きねぇ。
地震がテーマなのにまさか飛んでくとは思わなかった。
そして何でもかんでも恋愛に結び付けちゃうのね。
あれは曖昧なまま行ってほしかったけど、どうやら"好き"が原動力じゃないとこの国の滅亡は防げないらしい。(天気の子は逆に好き=バルスだったけど。)
まあこの監督に恋愛抜きって言っても無駄なんだろうが、ならもうちょっと気持ち悪いくらいそっちに振り切ってほしいんだが。
前2作と比べても今回は少なめで、テーマ的にあえて抑えてる感じはするんだが、過去作のカメオ出演的なのもなかったっぽいし、物足りん。

面白い部分も結構あったから惜しいなぁって感じなんだけどね。
昔の人目線だと地震の原因をこんな感じに想像してたのかなーとかね。ナマズ然りミミズ然り。
プレートテクトニクス的に見てもミミズとか常世の表現はちょっと面白かった。
火が出て高温な感じとか薄暗くどんよりして地下っぽくて良かったのでは。実際はめっちゃ高圧で人間なんてぺしゃんこだけど。
常世の空が綺麗だったのは鉱石とかの表現なんかかな?センターオブジアースみたいな。
もし、あの常世がモホ面なんかを表現したものなら、あそこには大量のカンラン石があるはずで、持ち帰れればCO2問題も解決するのに…
とか邪な考えで見てたりもした。

後ろ戸を閉めるときに声が聞こえるっていう、特に「おはよう~いってらっしゃい」の表現はベタだけど、そこにあった幾人もの挨拶が、あっという間に流されてしまったんだなってのは伝わった。
ミミズに要石を打ち込むときはもはや"戸締まり"じゃねぇじゃんって思ったけど。
小雀の「お母さんも探してて困ってるはずで、お家がなくなっちゃって居場所が分からなくなっちゃっただけで」ってのには不覚にも目が一瞬潤ってしまった。

しかし母ちゃん子供にスズメって名前つけたんかーなかなか思い切ったね、って思ったら母親は母親で椿芽って名前なのか。鳥一族だったんだな。
でも妹は環、そこは鳥じゃないんかい。
足環からきとんかね。雀は留鳥で渡らないけど、鈴芽の監視役・保護者的な意味合いにはなるか。

まあ名字が岩戸で大神(ダイジン)とくれば鳥っぽい名前も天鈿女命からきてるんだろうけど。
鈴はどっからだ?と最初は石見の鈴神楽かなと思ったけど、島根でなく宮崎だったので天岩戸神社の方で何某か関連するものがあるのか、ただ雀・燕って語呂がよかっただけなのか←多分こっち。
(全然関係ないけど、ウズメって漢字表記が多すぎるよね。宇受、鈿女、宇津女、etc…流石に伝説ともなると古事記やらなんやらで表記ゆれもいっぱいあるんだな。
 と、前に子供の名前考えるとき日本書紀を軽くあらまし読んだときに思ったときのどうでもいい話。)

そんで宮崎からのなんで愛媛?と思ったけど、題材的に中央構造線に沿って東京に向かったのかな、とか深読みして見ていた。
何となく最初は断層めぐりの旅なのかなーと勝手に解釈していたけど、多分、関係ないな。途中で神戸とか出てきたから、震災絡みなんだろうけど。
まあそもそも日本で地震が絡まない場所なんてほとんどないからそう見えちゃうだけで、ちょっと前まで一番少ないと言われていた富山県も去年も今年も大きいのが能登半島にきたしなぁ。
日本海側の方が太平洋より比較的少ないってだけで、あそこはがっつりアムールプレートの境界もあるし。
(日本海側が少ないというより太平洋側が多すぎるんだけども。全然パシフィックじゃないもん。)
もとよりこの国に安全地帯なんて今以上それ以上ないよね。

あと愛媛でいうと「しんから」って聞いたことなかったんだけども、地元民的にあの辺の方言は色々と合ってるんだろうか?
イントネーションも愛媛っぽくなかったし、西条だったから東予の方言なのかな。
すごい関西弁っぽいなーって思ったけど、どうやら東予は早口らしいのであんなもんなんかね。
中予と南予の人は喋ったことあるけど、愛媛の人はもうちょいまったり?まろやか?に喋る印象で、もっとケンケン・ヨーヨー言うて親しみやすいイメージなんだが。

てか閉じ師って一人なん?だとしたら荷が重すぎない?ソウタくん。
首都のド真ん中で文字通りめっちゃ要な場所なのに社も特になく、むしろ黒塗りして秘匿までされて。
ああいう四神相応みたいなとこって最重要拠点として何人かで奉って鎮め守るものではないんかね。
どう思います?全国の閉じ師さん。

閉じ師になるには先天的な才能が必要とかだったら人手不足・後継者不足は他の家業より致命的なんだろうけど。
にしても重要度と成り手のバランスがおかしいような。
国家機関とかあってもいいレベルだよね、百万単位で人命かかってるなら、なおのとこ。
別に常世が見える必要はないんだろうし、あの鍵が1本しかないとかなら分かるが。

全体的に表現が既視感だったのと、無駄も多く感じた。
凍ったソウタくんはなんかハウルっぽかったし。
オープンカーのくだりはサダイジン以外ほぼほぼ要らんかったと思う。あそこで寝かけたわ。
懐メロ使った意図も良くわかんないし、ジジババホイホイ用なのか?あれだけで観に行こうとは思わんが。作り手のただの性癖なのかな。

ダイジンもようわからんかったしなぁ。寂しさ全振りってだけで。
「後ろ戸に案内してくれていたのね!」とか言って"ダイジン実は良いヤツ"感を出そうとしてたけど、そもそもお前が逃げなきゃこんなことになっとらんわって思った。
日本の神様ってのは人間なんか知ったこっちゃないってスタンスで良いことも悪いこともするけども。神=救いってのは西洋文化だしな。
まあこんだけ災害の多い国だとそういうなるわな。
アニミズムとか自然宗教において、神(自然)ってのはあくまでもただのエネルギーで、プラスに働くかマイナスに働くかは受け手の認識の問題だし。
そうなってくると、いかに神を怒らせないようにするかっていう思想に落ち着くんだと思う。

にしてもイス飛びすぎだよな。
自重を考えてもあんなん無理でしょう。飛んでるよね、確実に。
メダリストが投げたってあんなに飛ばないよ。
祝詞ブーストとか要石パワーでなんか外力が加わってんのかな。

バーっと脳内を書き出してみたら作品の感想っていうよりバックグラウンドの話ばっか書いているな…
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