ユーライ

夏へのトンネル、さよならの出口のユーライのレビュー・感想・評価

3.3
酷な表現をすれば「AIに新海誠と大林宣彦を学習させて出力した」くらいに物語が無味無臭過ぎる。ありきたりの域を超えて、フリー素材で構成されたような味気無さ。別に逆張りをやれば偉い訳でもないが、一から十までこちらの予想を超えないのも問題。無駄なカットを排した丁寧な演出をやっているのは分かるが、それが逆にプロットのどうしようもない凡庸さを浮かび上がらせてしまっている。退廃的な風景の点描は『空の境界』を、片田舎での閉塞感を舞台にした後ろ暗い青春は桜庭一樹の諸作を彷彿させるが、00年代を今更大っぴらにやられても困る。新海誠がメジャーな面をして性癖博覧会をやっているのに比べると、作り手の欲望が感じられないのがつまらない一番の原因。黒髪ロングJKが最高なのはいいとして、作画の都合もあろうがもっと一本一本の描線に悶えるようなフェティッシュが欲しかった。ウラシマトンネルの設定に漂う死の気配も、CGを使った人工的な空間に設えてしまったことで妖しさも怖さもない。ただ綺麗なだけ。千年経ったら……とか言わせるならいっそせめて50年は飛ばしてお婆ちゃんになった彼女と再会するべきだった。ラノベにこんなツッコミは野暮。
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