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生きる LIVINGのnanaのネタバレレビュー・内容・結末

生きる LIVING(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

言わずと知れた黒澤明の名作『生きる』を、ロンドンを舞台にリメイクした作品。
まず驚くのはその上映時間で、黒澤版が143分あったのに対し、本作は103分。
え、『生きる』ってこんなに短くできたの!?と驚きましたが、だからといって本作が物足りなく感じたり、十分に描けていないということはないと思います。
逆に言えば、黒澤版がかなりこってりじっくり描いているのかも。

オリジナルで志村喬が演じていた主人公を今回演じるのは、英国俳優ビル・ナイ。
目をうるうるさせた顔面力!な志村喬とは対照的に、命僅かとなった男の様々な心境を、ちょっとした表情の変化で表現していいます。

個人的にはトム・バークがとても良くて、もっと彼との絡みを見たかったくらい。
独特な存在感やメフィスト感はやはりオリジナルの伊藤雄之助の方が強いのですが、この2人の間に流れる時間が好きでした。

物語の流れはほぼ同じで、主人公が余命通り死んで途中から全くいなくなってしまうこの物語構成を考えた黒澤(&橋本忍)の偉大さも思い知りました。
オリジナルの展開を知っているので、役所の人達が「彼の意思を、レガシーを継いで俺たちも頑張ろう!俺はやるぞ!」となっているシーンは見ていてつらいものがありました。
でもこの展開こそが人間らしさであり、現実かもしれません。

こってりじっくり感やちょっとしたユーモアがあるところも含め(オリジナルは主人公が自分が癌だと知るところすらちょっと「面白い」シーンにしているのが凄い)、より好きなのは黒澤版ですが、とても意味のある良作リメイクだと思いました。
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