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ザ・ロストシティのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ザ・ロストシティ(2022年製作の映画)
3.3
 恋愛小説家のロレッタ(サンドラ・ブロック)は創作上のスランプに陥っている。ロマンティックな冒険小説のフィナーレを何とか書き終えた後、疲れ果てたところに今度は新刊の宣伝ツアーが待ち構える。嫌々ながらイベントに出た上に、作品の主人公ダッシュを演じるカバーモデルのアラン(チャニング・テイタム)の軽薄な態度が鼻につき、イライラを募らせていた。小説家よりも人気で、現実を独り歩きするアランの身体はムキムキで、会場に集いしファンは想像主であるロレッタにはまるで興味を示さず、専らアランの身体にしか興味がない。アランの男らしさに拍車がかかるものの、想像主の逆鱗に触れ、カツラの下の頭が露になる。そんな彼女の前に億万長者フェアファックス(ダニエル・ラドクリフ)が現れる。小説はあくまでフィクションにも関わらず、小説に付随する3人のイケメンたちがいきなりロレッタの前に現れ、登場人物たちのキャラクターを上回る活躍を見せるという何とも困った物語で、小説の物語と現実の出来事がメタ構造になっている。ロレッタの小説を読んだフェアファックスは、彼女が伝説の古代都市ロストシティの場所を知っていると確信しており、彼女を南の島に連れ去り財宝の在り処を探そうとしていた。ロレッタが誘拐されたと知ったアランは、彼女を助けられなかったことを悔やみ、ジャック・トレイナーという謎の人物(ブラッド・ピット)を味方に島へと上陸する。

 全てはアラフィフ女性の夢の様な物語だ。小説家はフィクションの世界を完全にコントロールしているが、現実世界には思いもよらぬ出来事が次々に起こる。まさに「事実は小説より奇なり」だがそれ自体が夢の様なシンデレラ・ストーリーなのだ。フェアファックスは彼女をここではないどこかへと連れ去る。彼女の身を案じたアランとジャックが彼女を追ってこの島へとやって来る。ジャック・トレイナーは超一流の傭兵で、殺しのプロだ。次々に辺り一面を殺戮の海にしていく。その様子に図体ばかりムキムキだが、頼りないアランは羨望の眼差しを向ける。ロレッタはアランを軽蔑し、ジャック・トレイナーという謎の人物を頼りにする。だがそこで思いもよらないような事態が襲い掛かる。一見してロバート・ゼメキスの『ロマンシング・ストーン/秘宝の谷』や『インディ・ジョーンズ』シリーズの様なお宝探しの旅は、思っていた以上にアドベンチャーの要素は薄い。相性最悪だと思っていた男と逃げなければならなかったヒロインが吊り橋効果で男の隠れた魅力に気付き、年上女性の内助の功で男の秘めたるポテンシャルを引き出すという何とも言えない物語なのだ。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』以上のしゃかりきぶりで前半のインパクトをかっさらったブラッド・ピットも見事だが、チャニング・テイタムのチワワの様な怯えた目もそれはそれで可愛い。ダニエル・ラドクリフはもっと役を選ぼうねと思うものの、映画そのものは映画館を出た瞬間からものの見事に忘れてしまい、ただただチャニング・テイタムの愛らしさだけが心に残る。
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